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「普通の人生」が壊れてゆく

2009年03月30日

 昨年わが国では、8万人ほど人口が減ったようで、これから出てくるさまざまなデータが証明してくれると思いますが、人口減・少子高齢化が次第に現実感を増していくことになるのでしょう。

 そんな中、毎日のニュースを追っていると、いわゆる「普通の人生」、標準的な人生が、多くの人にとって次第に成り立たなくなってきているようです。
 安定的な雇用の確保に始まり、結婚して子どもをもち、世帯収入や貯蓄の増加を背景に住宅を手に入れ、育児・教育を乗り切り、資産を蓄えて安穏な老後を迎える…。こういうコースを「普通」と呼ぶことに抵抗のある人もいるでしょうが、逆に、このようなライフコースこそ「普通の人生」とイメージしている人は少なくないはずです。

 しかし世は移り、昨今、私たちが接するニュースの数々は、このようなコースの破壊や分断を示唆するものばかりといっても過言ではありません。雇用の不安定さは、遂に正規雇用の人たちにまで及んできました。このままだと不安定さ・不透明さ、いずれ公務員の方にも無縁な話ではなくなるでしょう。そして、世帯収入は年齢が上がれば増えるというものでもなくなりました。とりわけここ数年は、景気や企業業績がいくら良くても(大企業の役員報酬は別でしたが)、その良さに合わせて給与が増えることはあまりなく、一方で業績が悪化すれば給与は当然増えず、賞与が大幅に減り、さらに、この収入がいつ途絶えてもおかしくない状態になっています。

 リーマン・ショック以降の落ち込みが激しいため、そちらに目を奪われがちですが、そのずっと前から、改革・規制緩和の名の下にこういう構造が準備され実現してきていました。「普通の人生」のための「安定的な雇用の元で増え続ける収入」という大前提が、徐々に崩れていったわけです。ですから、対症療法的な対策が、二次だろうと三次だろうといくら打たれても、その場しのぎに終わるのではないかと思われます。

 例えば、すでに1,000万人を超えたといわれる年収200万円以下の人は、今後、ごく「普通」に結婚ができるほどに、また子どもが産めるほどに、その子どもの教育がまっとうできるほどに、さらには住宅を取得して老後用の資産を作れるほどに、収入が増えるのでしょうか。それはやはり、「自助努力」の問題であり、「自己責任」を取るべき事柄なのでしょうか。大きな経済成長が見込めず、したがって分け合うべき富も大きくは増えない中では、恵まれた人だけが「普通」に人生を送ればいい…。決して大っぴらに言われることはありませんが、今の社会を主導している人や団体からは、そんな実もフタもないメッセージしか感じ取れない昨今です。

筆者プロフィール
生活経済ジャーナリスト 野田 眞

「日経マネーDIGITAL」FP快刀乱麻より   (c)日経BP社 日経マネー編集部

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