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低価格競争の行く末は…

2009年11月05日

 低価格競争に拍車がかかっている。消費者物価指数は、7月から連続して3カ月も対前年比2.0%超の下落となっている。2008年夏の原油高の反動がその要因と言われてきたが、9月の消費者物価指数を詳細に見ると、原油高の影響は弱まった反面、食料品や衣料品の値下げなど、身の回りの商品の値下げに移ってきている。

 その象徴がジーンズだろう。ファーストリテイリング(ユニクロ)の関連会社、ジーユーが2009年3月に990円ジーンズを発売して度肝を抜いたと思ったら、その後大手スーパーはさらなる低価格の880円のものを。西友がさらに850円のジーンズを発売して、低価格ジーンズ競争は終焉を迎えたと思ったら、2009年10月にはドン・キホーテが衝撃価格690円ジーンズを発売。この分では500円台のジーンズが発売されるのも時間の問題と思えなくもないが、ふと考えさせられてしまうことがある。ジーンズそのものをまだ見ていないため、あくまでも価格からだけの推測だが、こんな安い価格で販売して、適正な利益を得ているのだろうかと…。あるいは、今までの価格はいったい何だったのか?と。

 もう一例をあげて恐縮だが、岡山地盤の食品ディスカウントストアね大黒天物産が、なんと198円弁当を販売している。ニュースで198円弁当のことを知ったのだが、そこの社員の人曰く「私たちの店舗を出店すれば、地域の物価を安くします」と言っていたのが印象的でならない。体力勝負だと一握りの勝ち組しか残れないかもしれないのに…。

 ひるがえって、金融業界も静かなる(一部では熱い)低コスト競争が続いている。株式の売買手数料、あるいは投資信託の投資コスト等々。投資コストを抑えることができれば、利益を得る機会が増えることは事実。だが、投資家のことを本当に思った上での投資コスト競争になっているのかと疑問に思ってしまう。

 たとえば、株式の売買手数料を安くしたのはいいけれども、採算が取れずに会社そのものを譲渡することになったら投資家はどう思うだろうか。私事で恐縮だが、筆者は仕事柄、いろいろな金融機関や金融商品を利用するべく、さまざまな金融機関に口座を開いている。仕組みを知るために開いた口座であっても、使い勝手がよければ、他の金融機関から資産を移して頻繁に使うことも多々ある。ところが、いたずらなコスト競争をしてくれるおかげで、しょっちゅう営業譲渡により社名が変わりました、ログインIDが変わりました等々の案内が来て辟易している。最高では、譲渡続きで数年間の間に社名が5回も変わった証券会社すらある。さらに、譲渡先にも口座があった場合は手続きがやや面倒になることもあり、いい加減にしてくれ!と言いたくもなる。

 古い話だが、ある大手銀行同士が合併したとき、双方に投資信託の口座を保有していたため、一方の支店からこんな電話がかかってきた。実際には、その電話に出ることができなかった(連絡は平日の昼間の自宅だった)ので、折り返し電話が欲しいとのこと。銀行から電話がかかってくるなんてめったにないことから、不正取引でもされたのか?と勘ぐってしまった(以前、預金を不正に引き出された経験があるもので)。曰く、「○○さんは当行I支店、当N支店の2つに投資信託の口座をお持ちですね。2つの支店に分けて管理されるのは面倒ではありませんか。当N支店にまとめられてはいかがかでしょうか」と。

 確かに、1つの支店にまとめることができれば、管理するには便利になるが、次の言葉を聞いて頭に血が上ってしまった。つきましては、当支店まで印鑑を持ってご来店してくれないかと言うではないか。おいおい、提案してくれるのは有難いが、来店しろ!とはどういうこったい。銀行側にとっても管理コストを抑えることができるのだから、本来であれば、そちらから書類を持って来てくれるのが筋だろう。あるいは、郵送で手続きをしても問題ないだろうに。そもそも、N支店は以前構えていた事務所の最寄りの支店であっただけの話であって、その支店よりもI支店に統合した方がよほど筆者にとっては便利なのである。すったもんだの挙句、筆者が述べた言葉は「統合してくれ!と頼んだ覚えは一度もない」であった。

 昨今の金融機関の統合等を見ていると、筆者は銀行からの電話を思い出さずにはいられない。低コスト競争などをするのもいいが、一度決めたルールを変えないでもらいたいものだ。投資家は多大なる迷惑を被る事が多いのだから…。

筆者プロフィール
深野 康彦

「日経マネーDIGITAL」FP快刀乱麻より   (c)日経BP社 日経マネー編集部

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