安全な農産物を適正な価格で手に入れるには
2008年10月17日国産の農産物を食べられるのは富裕層だけ!?
昨年から食品の値上がりが相次ぎ、じわじわと家計を圧迫しています。さらにリーマン・ショックによる金融不安が広がり、家計を引き締めるため、食費を減らそうとしている家庭も多いのではないでしょうか。しかし、あまり安い食品は農薬汚染などの心配があるのでは・・・と不安です。かといって、有機栽培など安全性の高い食品を選べば、割高で食費のカットになりません。
日本の農産物は安全性が高くおいしいと評価が高く、東アジアを中心に約2200億円輸出されています。しかし、人件費などのコストがかかり、国内市場では安い輸入品と競争になりません。その結果、約5兆5300億円もの農産物を輸入しています。
住宅ローンを抱えながら子育て中など可処分所得の低い家庭は、安全性にリスクのある安い輸入食品を選ばざるをえず、日本の高い農業技術で生産された農産物が海外の富裕層に食べられている現象に、矛盾を感じてしまいます。
担い手が消え、構造変化が起きつつある日本の農業
米価の引き下げや経済のグローバル化による農産物貿易の自由化によって、日本の農家戸数や農地面積が激減しています。1980年には466万戸あった農家が252万戸に、1981年に544万haあった耕地面積は465万haに減っています。農業就業人口も1980年の506万人から299万人となり、そのうち65歳以上の高齢者が60%を占めています(農林水産省ホームページ「農林水産基本データ集」及び農業センサスなどより)。
つまり、農業で収益を上げることが難しく、農業の後継者がいなくなり、65歳以上の高齢者中心の農業になってしまったというわけです。こうした危機的現状を改善するため、農水省は2005年「食料・農業・農村基本計画」で大規模農業経営体に集中的に支援する方針を明らかにしています。その結果、法人形態で農業を営む農業法人が8700、農地を取得できる農業生産法人が約10,000、集落を単位として農家を組織化・法人化して農業生産を共同化して行う集落営農が約13,000成立するなど、大きな変化が起きているのです。
グローバル化された農業の行き着く先は・・・
日本の製造業は、1980年代半ばの円高時代から生産拠点を海外に移し、多国籍企業化しています。同様に食品メーカーも安い輸入農産品を使うか、海外で製造するようになっています。こうした市場原理によるグローバル化が、世界の農業にどんな影響を与えたのでしょうか。
まず、多国籍企業による支配力が強まりました。例えば、収益を上げるために単一作物の大規模生産が行われ、弱小農家は淘汰され、生き残った大規模農家も作付け品種や買い取り価格など、資本力のある多国籍企業の下請け化していきます。
その結果、例えば、ファストフードのフライドポテトに適したじゃがいもの品種のみ大量生産され、買い取られるかどうかわからない他の品種は生産されなくなる、というような現象が起きます。
また、農業生産が工業化されたほか、穀物などが投機対象となっているため、天候リスクの他に石油価格の高騰や金融市況などのリスクもあり、価格変動が激しくなっています。最近のトウモロコシなど穀物価格の急騰は、エタノールなどバイオ燃料への転用や新興国での需要増大が背景とされています。その結果、アフリカなど飢えに苦しむ発展途上国では暴動が起きました。《飢えている人からトウモロコシを取り上げ、車を走らせるために使っていいのか》という主張には同感させられます。
グローバル農業は曲がり角?
薄利多売のファストフード産業や食品加工企業などの、徹底したコストカットを農業に求める姿勢に、世界各国で反対運動が起きています。イタリアのスローフード運動が世界に広がり、日本でも地産地消運動が展開されています。
生産が工業化されているとはいえ、農産物は天候に左右される自然の恵みであり、人間にとって生命を維持する糧なのです。市場原理だけで動くビジネスとは違うのではないでしょうか。安全な農産物が、富裕な消費者のための嗜好品であっていいはずがありません。すべての人々が安全な農産物を適正な価格で手に入れられ、健康を維持できるような、農業のあり方が問われているのではないでしょうか。
日本の農業の衰退は止まるのか?
農業経営の法人化は、日本の農業支援の柱とされています。メリットとして新規就農者を受け入れやすく、労災保険などの福祉が充実し、資金調達力がつくことなどが挙げられます。また、百貨店やスーパーなどの小売企業が出資した農業生産法人ができ、消費者が求める安全な農産物を自ら生産する動きも出てきました。
しかし、法人として利益を出そうとするなら、大量生産してコストダウンできる規模の拡大に向かっていくことが予想されます。農業生産法人への企業の出資は10%が上限ですが、早くも規制緩和を求める声が上がっているようです。
多国籍企業が海外で行ったのと同様の、市場原理による農業が強化されれば、圧倒的多数の家族経営の弱小農家がつぶれていく可能性も大きいのではないでしょうか。
農業に関心をもつことが、私たちにできる最大の支援策
私たち消費者は、家計防衛のために価格だけを見るのではなく、健康に生きていくために、まっとうな農産物を適正な価格で手に入れる権利がある、という視点が必要なのではないでしょうか。そのためには、私たちが口にする農産物や食品が、どこでどのように生産されているのか関心をもち、農家の生産努力を理解し、相互交流することが重要なのではないでしょうか。
昨年から食品の値上がりが相次ぎ、じわじわと家計を圧迫しています。さらにリーマン・ショックによる金融不安が広がり、家計を引き締めるため、食費を減らそうとしている家庭も多いのではないでしょうか。しかし、あまり安い食品は農薬汚染などの心配があるのでは・・・と不安です。かといって、有機栽培など安全性の高い食品を選べば、割高で食費のカットになりません。
日本の農産物は安全性が高くおいしいと評価が高く、東アジアを中心に約2200億円輸出されています。しかし、人件費などのコストがかかり、国内市場では安い輸入品と競争になりません。その結果、約5兆5300億円もの農産物を輸入しています。
住宅ローンを抱えながら子育て中など可処分所得の低い家庭は、安全性にリスクのある安い輸入食品を選ばざるをえず、日本の高い農業技術で生産された農産物が海外の富裕層に食べられている現象に、矛盾を感じてしまいます。
担い手が消え、構造変化が起きつつある日本の農業
米価の引き下げや経済のグローバル化による農産物貿易の自由化によって、日本の農家戸数や農地面積が激減しています。1980年には466万戸あった農家が252万戸に、1981年に544万haあった耕地面積は465万haに減っています。農業就業人口も1980年の506万人から299万人となり、そのうち65歳以上の高齢者が60%を占めています(農林水産省ホームページ「農林水産基本データ集」及び農業センサスなどより)。
つまり、農業で収益を上げることが難しく、農業の後継者がいなくなり、65歳以上の高齢者中心の農業になってしまったというわけです。こうした危機的現状を改善するため、農水省は2005年「食料・農業・農村基本計画」で大規模農業経営体に集中的に支援する方針を明らかにしています。その結果、法人形態で農業を営む農業法人が8700、農地を取得できる農業生産法人が約10,000、集落を単位として農家を組織化・法人化して農業生産を共同化して行う集落営農が約13,000成立するなど、大きな変化が起きているのです。
グローバル化された農業の行き着く先は・・・
日本の製造業は、1980年代半ばの円高時代から生産拠点を海外に移し、多国籍企業化しています。同様に食品メーカーも安い輸入農産品を使うか、海外で製造するようになっています。こうした市場原理によるグローバル化が、世界の農業にどんな影響を与えたのでしょうか。
まず、多国籍企業による支配力が強まりました。例えば、収益を上げるために単一作物の大規模生産が行われ、弱小農家は淘汰され、生き残った大規模農家も作付け品種や買い取り価格など、資本力のある多国籍企業の下請け化していきます。
その結果、例えば、ファストフードのフライドポテトに適したじゃがいもの品種のみ大量生産され、買い取られるかどうかわからない他の品種は生産されなくなる、というような現象が起きます。
また、農業生産が工業化されたほか、穀物などが投機対象となっているため、天候リスクの他に石油価格の高騰や金融市況などのリスクもあり、価格変動が激しくなっています。最近のトウモロコシなど穀物価格の急騰は、エタノールなどバイオ燃料への転用や新興国での需要増大が背景とされています。その結果、アフリカなど飢えに苦しむ発展途上国では暴動が起きました。《飢えている人からトウモロコシを取り上げ、車を走らせるために使っていいのか》という主張には同感させられます。
グローバル農業は曲がり角?
薄利多売のファストフード産業や食品加工企業などの、徹底したコストカットを農業に求める姿勢に、世界各国で反対運動が起きています。イタリアのスローフード運動が世界に広がり、日本でも地産地消運動が展開されています。
生産が工業化されているとはいえ、農産物は天候に左右される自然の恵みであり、人間にとって生命を維持する糧なのです。市場原理だけで動くビジネスとは違うのではないでしょうか。安全な農産物が、富裕な消費者のための嗜好品であっていいはずがありません。すべての人々が安全な農産物を適正な価格で手に入れられ、健康を維持できるような、農業のあり方が問われているのではないでしょうか。
日本の農業の衰退は止まるのか?
農業経営の法人化は、日本の農業支援の柱とされています。メリットとして新規就農者を受け入れやすく、労災保険などの福祉が充実し、資金調達力がつくことなどが挙げられます。また、百貨店やスーパーなどの小売企業が出資した農業生産法人ができ、消費者が求める安全な農産物を自ら生産する動きも出てきました。
しかし、法人として利益を出そうとするなら、大量生産してコストダウンできる規模の拡大に向かっていくことが予想されます。農業生産法人への企業の出資は10%が上限ですが、早くも規制緩和を求める声が上がっているようです。
多国籍企業が海外で行ったのと同様の、市場原理による農業が強化されれば、圧倒的多数の家族経営の弱小農家がつぶれていく可能性も大きいのではないでしょうか。
農業に関心をもつことが、私たちにできる最大の支援策
私たち消費者は、家計防衛のために価格だけを見るのではなく、健康に生きていくために、まっとうな農産物を適正な価格で手に入れる権利がある、という視点が必要なのではないでしょうか。そのためには、私たちが口にする農産物や食品が、どこでどのように生産されているのか関心をもち、農家の生産努力を理解し、相互交流することが重要なのではないでしょうか。
フリーライター 関口章子
提供:株式会社FP総研
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