急速な円高も「歴史的な高値圏」ではない!?
2008年10月30日今月だけで平均20%の円高・・・
世界各国の「協調利下げ」、「公的資金注入」という政策発動から既に数週間が経過しましたが、金融市場はまだまだ暴力的な動きが続いています。株式市場は一日で6~10%も動くことが珍しくない状態ですし、為替市場でも連日激しい動きが続いています。
円相場はその最たるものとなっており、10月だけで対主要通貨平均で約20%という急激な円高となりました。もちろん各通貨ごとに見れば、対米ドルでは106円程度から93円台まで約11%、ユーロは150円程度から117円台まで約21%、豪ドルは84円台から58円程度まで約32%とかなりの差異がありますが、それを平均しても1ヶ月あまりで2割も円高というのは、歴史的に見ても過去に例を見ない非常に大きな動きです。
少々専門的になりますが、過去のデータから統計的に計算してみると、円相場の月間の変動率(標準偏差)はせいぜい2~3%です。そうすると1ヶ月で2割というのは7~10標準偏差ということになり、計算すると少なくとも約4,000億分の1の確率、すなわち、計算上は甘く見積もっても約180億年に一度の出来事が起きたことになるほどのインパクトです(ちなみに地球が誕生したのは46億年前で、宇宙の誕生であるビッグバンが137億年前というのが現在の定説です・・・)。
歴史的に見て現在の「水準」は円高か円安か?
以上のように、最近の動きは非常に物凄いものがあったわけですが、これだけ大きく相場が動いた今、現在の「相場水準」が歴史的に見て円高圏にあるのか、それとも円安圏にあるのかを見てみましょう。
結論から先に申し上げますと、今回の急激な変動で「大幅な円安圏からようやく過去の平均水準程度に戻ったところ」というのが現在の状態です。
そう聞くと、昔は1ドル=360円で95年の最高値が約80円で、なぜ90円台半ばが平均なのかと疑問に感じる方々も多いと思いますが、為替相場はこうした「名目値」で見ても歴史的な強弱は測れません。なぜなら各国によって物価の上がり方が違うため、インフレの国の通貨は自然に下がり、あまりインフレがない国の通貨は自然に上がるからです。
例えば、これから日本では30年ずっと物価が上がらず、一方でアメリカでは年間毎年5%のインフレがあったとしましょう。スタート時点では1ドル=100円だったとします。
ここでリンゴが一個、日本では100円、アメリカでは1ドルで売られていたとします。それから30年後に時計を進めてみましょう。リンゴの値段がいくらになっているかというと、日本では物価が上がりませんでしたから100円のままですが、アメリカでは5%のインフレが30年間続いたことによって4.3ドルになります。
さてそのときの為替相場はどうなっているでしょうか?リンゴの価値は日本でもアメリカでも変わりませんので、100円=4.3ドル、すなわち1ドル=23円まで円高が進行していることになります。これは一見物凄い円高が進行したように見えますが、実はアメリカのほうがインフレ率が高かったという事実だけで動いたため、日本人もアメリカ人も得も損もしていません。昔360円だった米ドルが今100円前後なのも、大半はこの「インフレ格差」で説明できます。このインフレ格差から導き出される(上の例の場合は1ドル=23円)為替相場の「適正水準」を専門的には「購買力平価」といいます。
実質水準で見ると・・・やっと過去の平均に戻ったところ
ただ実際の為替相場はこの「購買力平価」に常に落ち着くわけではなく、それよりも高くなったり安くなったりします。この購買力平価と比べて、実際の相場がどうなっているのかを現すのが「実質レート」です。実質レートは新聞などではあまり出てきませんのでなかなかなじみにくいとは思いますが、投資のプロは常にこれをウォッチしながら現在の水準を考えています。
この実質レートを見ると、円相場はここ数ヶ月の急激な円高により、ほぼ1970年から2008年の平均に戻っており、基本的に円安が続いた過去10年の平均と比べると、既に若干の円安圏に来ています。ただし、けっして過去の歴史から見て「円高圏に到達している」ということではありません。豪ドル相場を見ると、既に90年以降の最安値に対円で到達しているように「名目値」では見えますが、オーストラリアのインフレ率が非常に高かったため、これを「実質化」するとそれほどの円高になっているわけではないことに留意する必要があるというわけです。
日本の将来は暗い、歴史的な円安トレンドは継続?
さて、大幅な円安圏からようやく過去の平均水準まで円相場が戻ったという事実を踏まえて、今後の円相場を占ってみましょう。もっともっと円高になるという可能性はあるのでしょうか?
筆者は、今後の日本の行く末を考えれば、既に十分な円高水準に来ているのではないかと見ています。日本の少子高齢化はこれから本番を向かえ、ますます生産性が下がることは確実です。日本国内には投資先はますます減り、今後も日本の持つ資産が海外に流出し続け、円安が粛々と続く可能性はかなり高いと見た方が良いと筆者は考えています。
もうしばらく円高の勢いが続くかもしれませんが、5年・10年単位で見れば、現在の円相場の水準は、歴史的な円売りのチャンスかもしれません。
世界各国の「協調利下げ」、「公的資金注入」という政策発動から既に数週間が経過しましたが、金融市場はまだまだ暴力的な動きが続いています。株式市場は一日で6~10%も動くことが珍しくない状態ですし、為替市場でも連日激しい動きが続いています。
円相場はその最たるものとなっており、10月だけで対主要通貨平均で約20%という急激な円高となりました。もちろん各通貨ごとに見れば、対米ドルでは106円程度から93円台まで約11%、ユーロは150円程度から117円台まで約21%、豪ドルは84円台から58円程度まで約32%とかなりの差異がありますが、それを平均しても1ヶ月あまりで2割も円高というのは、歴史的に見ても過去に例を見ない非常に大きな動きです。
少々専門的になりますが、過去のデータから統計的に計算してみると、円相場の月間の変動率(標準偏差)はせいぜい2~3%です。そうすると1ヶ月で2割というのは7~10標準偏差ということになり、計算すると少なくとも約4,000億分の1の確率、すなわち、計算上は甘く見積もっても約180億年に一度の出来事が起きたことになるほどのインパクトです(ちなみに地球が誕生したのは46億年前で、宇宙の誕生であるビッグバンが137億年前というのが現在の定説です・・・)。
歴史的に見て現在の「水準」は円高か円安か?
以上のように、最近の動きは非常に物凄いものがあったわけですが、これだけ大きく相場が動いた今、現在の「相場水準」が歴史的に見て円高圏にあるのか、それとも円安圏にあるのかを見てみましょう。
結論から先に申し上げますと、今回の急激な変動で「大幅な円安圏からようやく過去の平均水準程度に戻ったところ」というのが現在の状態です。
そう聞くと、昔は1ドル=360円で95年の最高値が約80円で、なぜ90円台半ばが平均なのかと疑問に感じる方々も多いと思いますが、為替相場はこうした「名目値」で見ても歴史的な強弱は測れません。なぜなら各国によって物価の上がり方が違うため、インフレの国の通貨は自然に下がり、あまりインフレがない国の通貨は自然に上がるからです。
例えば、これから日本では30年ずっと物価が上がらず、一方でアメリカでは年間毎年5%のインフレがあったとしましょう。スタート時点では1ドル=100円だったとします。
ここでリンゴが一個、日本では100円、アメリカでは1ドルで売られていたとします。それから30年後に時計を進めてみましょう。リンゴの値段がいくらになっているかというと、日本では物価が上がりませんでしたから100円のままですが、アメリカでは5%のインフレが30年間続いたことによって4.3ドルになります。
さてそのときの為替相場はどうなっているでしょうか?リンゴの価値は日本でもアメリカでも変わりませんので、100円=4.3ドル、すなわち1ドル=23円まで円高が進行していることになります。これは一見物凄い円高が進行したように見えますが、実はアメリカのほうがインフレ率が高かったという事実だけで動いたため、日本人もアメリカ人も得も損もしていません。昔360円だった米ドルが今100円前後なのも、大半はこの「インフレ格差」で説明できます。このインフレ格差から導き出される(上の例の場合は1ドル=23円)為替相場の「適正水準」を専門的には「購買力平価」といいます。
実質水準で見ると・・・やっと過去の平均に戻ったところ
ただ実際の為替相場はこの「購買力平価」に常に落ち着くわけではなく、それよりも高くなったり安くなったりします。この購買力平価と比べて、実際の相場がどうなっているのかを現すのが「実質レート」です。実質レートは新聞などではあまり出てきませんのでなかなかなじみにくいとは思いますが、投資のプロは常にこれをウォッチしながら現在の水準を考えています。
この実質レートを見ると、円相場はここ数ヶ月の急激な円高により、ほぼ1970年から2008年の平均に戻っており、基本的に円安が続いた過去10年の平均と比べると、既に若干の円安圏に来ています。ただし、けっして過去の歴史から見て「円高圏に到達している」ということではありません。豪ドル相場を見ると、既に90年以降の最安値に対円で到達しているように「名目値」では見えますが、オーストラリアのインフレ率が非常に高かったため、これを「実質化」するとそれほどの円高になっているわけではないことに留意する必要があるというわけです。
日本の将来は暗い、歴史的な円安トレンドは継続?
さて、大幅な円安圏からようやく過去の平均水準まで円相場が戻ったという事実を踏まえて、今後の円相場を占ってみましょう。もっともっと円高になるという可能性はあるのでしょうか?
筆者は、今後の日本の行く末を考えれば、既に十分な円高水準に来ているのではないかと見ています。日本の少子高齢化はこれから本番を向かえ、ますます生産性が下がることは確実です。日本国内には投資先はますます減り、今後も日本の持つ資産が海外に流出し続け、円安が粛々と続く可能性はかなり高いと見た方が良いと筆者は考えています。
もうしばらく円高の勢いが続くかもしれませんが、5年・10年単位で見れば、現在の円相場の水準は、歴史的な円売りのチャンスかもしれません。
グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿
提供:株式会社FP総研
おすすめ情報
最新コラム
|
人気ランキング
| コラムタイトル | 平均スコア | |||
| 1. | 本当は怖い“保険料の未納” - 6月5日 | 7.81 | ||
| 2. | 徐々に浸透しつつある「米国経済の真の姿」 - 11月13日 | 7.61 | ||
| 3. | 投資家から忘れられたフィリピンの実力 - 10月30日 | 7.53 | ||
| 4. | 世界を震撼させた-南アフリカ・ランド事件 - 11月5日 | 7.35 | ||
| 5. | 海外勢の円キャリー・トレード激減の影響は? - 11月20日 | 7.19 |
PR
最新コラム
- IMF「ユーロはやや高すぎ」 - 11月25日
- ドル/円相場・昨日の解説と今後の見通し - 11月25日
- 成長は続く?バークシャー・ハサウェイの未来 - 11月25日
- 11月は生命保険を考える月 - 11月25日
- 今夜の注目材料はこちら☆ - 11月24日

