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為替相場の変動は決算にどう影響を与えるか

2008年10月23日

 この何年かを見ても、ここ数ヶ月の為替相場の変動は急激と言えるでしょう。まれにみる大幅な上昇・下落の波にさらされています。もちろんサブ・プライムローンの問題やリーマン・ブラザーズの破綻が大きな原因となっていますが、このような為替相場の変動が企業の決算・業績に与える影響には、どんなものがあるのでしょうか?
 特に円高の場合に問題視されることが多くありますが、円高の場合には、企業のどこにどんな影響がでるのでしょうか?2つに分けて見てみましょう。

実態経済への影響
 まず1つ目は、みなさんご存知の方も多い例となります。
 例えば、日本で作った100円の車を米国で売るときには、100円/ドルであれば1ドルで売ることになりますが、それが50円/ドルになれば2ドルで売ることとなります。同じ仕様の車を米国のライバル会社が作ったのであれば1ドルで売られていますので、高い価格で勝負しなければいけなくなるわけです。高いほうは必然的に売れ残ることになり、企業の業績に悪影響を及ぼすこととなります。このように、日本で作って海外に輸出するような企業は、円高になると製品が売れなくなってしまうのです。

財務諸表上の損失の発生
 2つ目は、外貨建ての資産や負債などがある場合です。
 外貨建ての資産・負債があった場合には、それを財務諸表に載せるために換算しなければいけません。日本の財務諸表にドルのまま載せるわけにはいきませんからね。例えば、1ドルの資産があった場合に、100円/ドルであれば財務諸表には100円と載ることとなりますが、50円/ドルであれば、50円としか載らないわけです。資産が少なくなってしまうのです。同時に、50円の為替差損が発生してしまいます。
 これは、先ほどみた輸出した製品が米国製品に比べて高くなってしまうから売れなくなるわけではなく、財務諸表上だけで損が発生するところがポイントです。

想定レートとは
 パッと見、前者のほうが、そのもの自体が売れなくなるわけなので、企業に与える影響が大きいと思えるのですが、後者のポイントも実は重要です。企業は自社の今期の業績を予想して発表しますが、その業績を予測する際に、想定レートを決めており、そのレートよりも円高になると、業績の下方修正要因となり、PER・PBRをはじめとする様々な指標に悪影響を与えるからです。

過去の円高
 今より10年以上も前になりますが、クリントンが大統領を務めた1993年を契機に、急激な円高が日本を襲ったことがありました。わが国のグローバル企業は急激な円高とその反動に翻弄されたのです。バブル崩壊にも重なり、わが国の企業はリストラを通して、無駄な贅肉をそぎ落とし、円高にも対応できる力を身につけることができました。具体的には、生産拠点を海外に移したりした企業が多くありました。国外で作り、国外で売ることで、為替相場の変動の影響をなくそうという考えです。トヨタなどはアメリカに工場を造っただけでなく、採用についても積極的に現地人を採用して、貿易摩擦をも乗り越えていきました。

企業経営の視点から
 為替リスクをヘッジするためには、銀行などと為替予約を締結することが主なヘッジ方法です。長期で為替予約が締結できれば良いのですが、逆に銀行にとっては、その為替リスクを自分たちが負うことになるので、現実にはなかなか良い条件で為替予約はできません。そのため、一般的には、6ヶ月程度の為替予約がメインと言われています。そうすると、年の最初に予測した通年の業績は、為替のリスクを反映することが難しくなります。

 また、企業の活動がグローバルになればなるほど、為替を含む財務政策もグローバルな視点で行わなければいけません。一部の大手企業(例えば、売上が1兆円を超えるようなグローバルな企業)は、十分な規模のメリットがあるため、財務の拠点を定め、集中化することで、全世界を見据えた効率的な財務政策が行われています。
 ですが、財務の拠点を作ると言っても、簡単なものではありません。一部の大手企業以外の企業は、財務拠点を作るほどのスケールメリットがないため、各国ごとに財務や為替の取り扱いに違いがあったりすることがほとんどです。情報は、本社に集まってきているものの、実際の資金調達や為替政策は、全世界の子会社などに任されていたり、逆に本社・本店に頼りっきり(結局日本の銀行に頼りっきり)になってしまったり、効率的な財務政策がとられているとは言えません。かなり有名な会社であったとしても、本社で管理しているのは、借入や預金の管理などだけ、なんてことはよくあることです。

今年独自の注意点
 企業は、為替変動リスクを回避するために、為替予約を始めとするデリバティブ取引を締結しています。ですが、この信用不安の中では、デリバティブ取引が決済されないというリスクも想定できます。どんな金融機関とデリバティブ取引を結んでいるのか、ちゃんと信用できる金融機関と取引しているか、そのあたりの情報まで有価証券報告書などで確認することがひと味違った賢い投資家への道かもしれません。

コラムニスト 横山 劉仁
提供:株式会社FP総研


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