先日、著名な演奏家の記事を目にする機会がありました。海外での演奏活動による所得を意図的に申告していなかった「所得隠し」があったそうですけれども・・う~む・・・。この表現って何か悪意があったことを想起させますね。でも言葉どおりの悪質な行為があったのかどうかは微妙なんです。

税金の追徴に関する記事を読むと「申告洩れ」と「所得隠し」の表現が使い分けられていて、その悪質さの程度が推察されます。曰く、「A社は税務調査で○○円の申告洩れを指摘され、そのうち××円は仮装・隠蔽(いんぺい)を伴う所得隠しと認定されて重加算税を含め△△円の追徴税額を・・・」というやつですね。でも税務調査の現場ではこの二つの取扱いの差は紙一重です。「所得隠し」と認定されるケースには、納税者が意図的に隠そうとしたわけではないと主張しても結果からみてそう判断せざるを得ないとして税務署サイドが認定する場合もあるんですわ。

説明が難しくなってしまいましたが、簡単な例でいうと会社の経理をやっている社長の奥さんが会社の事務用品と一緒に自分の子供の学用品を買ったのにそのまま全部経費にしちゃったとか、現金で回収した売上を社長が自分の財布に入れて持って帰って会社の経理に渡すのを忘れちゃったとかですね。これなんか「すんません。間違えました。忘れてました」で済みそうな話なんですが、そうはいきません。費用でないものをあたかも費用であるかのごとく仮装した、会社の収入とすべきものをあたかもなかったかのごとく隠蔽したということで意図的な「所得隠し」とされても仕方ありません。「申告洩れ」にしないのは、本当に忘れてたのか、税務調査で指摘されたら忘れてたって言おうと画策したのかを納税者の言い分だけで判断することができないからで、最近の税務調査はこの扱いがとても厳しいです。

ですから前出の演奏家の方もひょっとすると隠すつもりなど全くなく適正と思ってやっていた処理が問題になったのかもしれません。まあ別にこの方を擁護するわけではありませんが、海外公演の収入が役務の提供として海外で課税されていたりすると課税関係はそれで終了と思っても不思議ではないし、日本の居住者は全世界の所得を日本で申告する必要があることも知っていたかどうか。一般の納税者の方に税法はすべて知っておけとか税法の適用の可否を勘違いするなとかいうのも酷な話ですね。

でも所得があることを知りながら日本で申告してなかったという結果は、「所得隠し」と報道されてしまいます。これでも「課税逃れ」や「脱税」にくらべればまだ程度が軽そうですが、もうちょっと「税法の不知」「税制の誤解」「勘違い」「管理不行き届き」「ズボラ(?)」「どんぶり勘定(??)」という実体に合った適切な表現を使用してもいいんじゃないかと思うんですがどうでしょうか。

ウェブの記事だとその根拠となる税法の説明や不適切とされた処理に至った経緯、関係者や識者の意見や納税者の反論をある程度紹介している記事もあって、その原因(不知や見解の相違の内容等)を知ることができるときもあるんですけど、新聞の三面記事は短くて結果しか伝わりません。具体的な内容を書くことは難しいかもしれませんが、少なくとも何でもかんでも「こいつ悪質!」と思わせるような報道にならないように配意をお願いします。

逆に報道される側も主張や弁明をブログか何かに載せて世間の理解を得る努力をしないと、誹謗中傷の餌食になったりしますのでご留意を。誤解を解くためにも是非とも情報を発信して日本の納税者を啓蒙してください。