
仕事柄、お客様がご自分の相続について話されるのを聞く機会があります。自分の財産をこんなふうに相続させたいと決めておられるのがわかると、「それ遺言書に書きましょうよ」ってお勧めしてます。「遺言書」、あると何かと都合いいですよ。
ご自分の財産を、「息子の嫁にも相続させるように言ってある」なんて話される人がおられます。息子にそう言ってあるんだからそのとおりにしてもらえると思われるかもしれませんが、息子さんの奥様は法定相続人ではないんで、そのままでは遺産を相続できないんですわ。この場合、養子にするという手もありますが、遺言書による遺贈でもOKです。相続人でない人に法的な裏付けなしに遺産を渡すと相続人からの贈与ということになってしまいますんで、注意してくださいね。
子供のいないご夫婦での相続を考えた場合、ご主人が自分の財産をすべて妻に相続させたいと思うなら遺言書の出番です。自分の兄弟姉妹が持つ四分の一の法定相続分を奥様のものに確定することができます。兄弟姉妹には遺留分(遺言の内容にかかわらず相続できる権利)がありませんので、意図したとおりの相続ができるんですわ。
家賃収入のある不動産にも効果ありです。家賃収入を特定の相続人に帰属させることができます。相続財産って遺産分割が確定するまでは相続人の共有ということになってますんでその間に発生した家賃収入も法定相続分で相続人に帰属するんですが、この原則どおりにやるということで不動産所得の計算・申告や手取金額の分配等にえらい手間がかかるケースがあります。誰が相続するか決まっている不動産は遺言で指定しておくと、遺産分割でもめて登記ができないまま放置されるという事態も避けやすいです。
さて遺言書を書くといっても、たいそうに構えることはありません。自分のすべての財産をどう分けるか決めないと書けないものではありません。一部の相続の指定でもかまいませんし、「○○には相続させない。(ただし遺留分についてはこの限りでない)」といった文言になることもあるでしょう。内容によっては遺産分割を混乱させたりもしますので、自信がなければ法律効果や様式を専門家にチェックしてもらったほうが安心ですね。入院中で病状が思わしくない場合など、相続人側が配慮して医師に立ち会ってもらって自己の意思による遺言であることや判断能力に問題がないことを証明してもらったりすることもあります。
遺言書を自筆で作成することが難しい場合はどうしましょうか。大丈夫、公正証書遺言の作成をご一考ください。公証人は病院へ出張もしてくれますし、字が書けなくても口述する内容を聞き取って遺言書を作成してくれます。ただ、その場ですぐ作成して押印してハイ出来上がりではありません。公証人に証人二人と一緒に遺言(法律用語で「いごん」って言われます)を伝え、印鑑証明書を渡すのが一回目の手続き。二回目の手続きで、後日公証人が作成した遺言書を証人二人と一緒に内容を確認して実印を押印して完成となります。法律要件は万全、遺言者の意思や判断能力が疑われることもありません。手数料がかかりますが、効果絶大です。
遺産分割でもめる原因って何なんでしょう。莫大な財産に目がくらむから?少ない財産を必死で取り合うから?いえいえ、財産の多少ではなく相続人の間に遺産の分け方が「不公平」という気持ちが生じるとモメてしまうんです。これには生前に親から受けた恩恵や親の老後の世話に対する貢献をどのように見積もるかといった遺産以外の価値観も加味されるので、相続人間では「公平」に対する考え方が相違することもありますよね。ですからご自身が公平と考えるわけ方を相続人に伝えてください。あなたの1枚の遺言書が、遺族の末永き良好な関係の維持に貢献するかもしれません。思い立ったら是非一筆したためてみてはいかがでしょうか。














