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火災保険だけが35年間、ほったらかし?

2009年10月15日

 今年の11月から、大手損保3社は新しい火災保険を売り出す。これを機に住宅火災保険や住宅総合保険、自由化以降の各社独自商品等は販売停止となり、火災保険は新商品に一本化される。
 保険金の支払い漏れや保険料取り過ぎ問題の反省から生まれた新商品、コンセプトはそれぞれだが共通点もある。従来型商品からの共通の変化を3つほど確認してみよう。
 1番目。火災保険という名称が消えている(「トータルアシスト住まいの保険」東京海上日動、「GK 住まいの保険」三井住友海上、「ほ~むジャパン」損保ジャパン)。火災保険とはいえ、昨今では自然災害による保険金支払いが大きいこと、災害補償のほか、契約者の住まいに関する各種の無料サービスなども行うため、こうした名称にしたのだろう。

 2番目。今までの火災保険では、たとえ同じ被害額でも、補償項目により受け取れる保険金が変わる、あるいはそもそも保険金を受け取れないことがあった。「風災・ひょう災・雪災」では損害額20万円以上のみを補償、「水害」は最大でも70%までの補償である。

 一方、新商品では補償項目を問わず、損害額から自己負担額を差し引いた金額が修理費ベースで補償される仕組みに変わっている。

 3番目。新商品では原則、全損時には「契約した保険金額=受け取れる保険金」となる。

 火災保険の目的は、建物などが受けた被災時時点の損害の穴埋め(=補償)であり、物件の価値を超える保険金は受け取れないのが基本だ。ところが、物件の価値は物価変動や時間の経過で変化する。従来型保険では、昨今ではスタンダードになった建物の再取得価額である「新価」のほか、時間経過による老朽化を加味した現状相当の金額である「時価」で契約しているケースがある。その場合、被災時時点の物件の時価が契約した火災保険金額よりも下がっていれば、保険金は火災保険金額より目減りし、時価を超えた分の保険金額は「無効」となるのが現在のルール。被災時現在の価値を超える補償は「利得禁止の原則(すなわち、焼け太り禁止)」により、保険金が支払われないのだ。

 ところが昨年成立した保険法により、火災保険のこうした硬直的ルールも柔軟な取り扱いが可能になった。同時に、保険法よりも契約者側に一方的に厳しい約款は無効となる。

 これを踏まえ新商品では、被災時点の評価が契約時と乖離したとしても原則、全損時には保険金額が保険金として支払われる仕組みとなっている。例えば「被災時の評価額が保険金額よりも低くても、評価額の1.3倍を上限に、保険金額が保険金として支払われる(トータルアシスト)」「建物評価額の+30%を上限に保険金額設定が可能(GK)」「契約時の保険金額が保険金として支払われる評価済保険の導入(ほ~むジャパン)」といった形だ。

 契約金額が受け取れる保険金とイコールなら契約者にわかりやすく、納得感もあるが、一方で留意点もある。設定した保険金額が将来にわたり、建物等の修理および再建に十分な金額である保証はない。物価変動などに対応した火災保険金額の見直しは、新しい商品でも当然必要なので、見直しをしやすい契約にしておくことをお勧めする。具体的には、ほったらかしになりがちな長期契約は避け、5年程度までの契約で、それも毎回同じ内容で更新するのではなく、更新の都度保険金額の見直しを行うことだ。これなら新商品のメリットを享受しつつも、いざという時に建物等の再建足りうる保険金が受け取れなかった、といった事態は避けられるはずである。

 社会・経済環境や国の制度、企業、そして販売される商品、そして私たち自身のおかれた状況や価値観を考えても、過去において絶え間なく変化してきたことがわかる。将来にわたり不変のものなどないのである。そのような中、火災保険だけが35年間、ほったらかしでいいわけがない。現状を踏まえた現実的な捉え直しが、私たちにはいつも必要である。

筆者プロフィール
清水 香

「日経マネーDIGITAL」FP快刀乱麻より   (c)日経BP社 日経マネー編集部

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