米国不動産投信(REIT)価格の反騰
2009年11月04日
前回のこのコラムでは、米国不動産市場がそろそろ底を打ったのではないかという見通しを書きました。今回はその続編として、リーマン・ショック後のREIT価格がどのように推移しているか、また直近の動向を見ていきたいと思います。
米REITの歴史と今
まずREIT(Real Estate Investment Trust)の歴史を振り返ってみましょう。
REITは米国において、Bradley Real Estate Investors社他5社が1961年に組成したものが最初のREITと言われています。それらの多くはニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場しています。米国REITも不動産投資の税制優遇が受けられるストラクチャーですが、日本やオーストラリアのREITと異なり、内部運用や自らの不動産開発が認められています。
既にいくつかのREITがS&P500にも組み入れられるようになり、ポートフォリオにおけるリスク分散のための投資先の一つとして投資家の信頼性も高まってきています。アメリカにおいては、インカムゲイン、キャピタル・ゲイン双方の高い利回りと成長性を有する金融商品であるとともに、不動産デベロッパーとしての機能も有しています。
例えば、アメリカ最大手のREITであるSimon Property(株式時価総額:約1.8兆円)は、その傘下のChelsea Premium Outletと三菱地所とのジョイント・ベンチャーで日本各地にアウトレット・モールを展開しています(御殿場・佐野プレミアム・アウトレットなど)。また、倉庫・工場施設の大手REITであるPrologis(プロロジス)が、日本においてプロロジスパークという名称で物流センターを展開しています。
単純に不動産を所有して家賃収入を得るといった機能に加え、自らビジネスモデルを考え、積極的に不動産ビジネスを創出する企業と言ってもいいでしょう。
リーマン・ショック後のREIT価格
さて、リーマン・ショック後に価格が急落した米REITですが、その指数(NAREIT総合指数:1971年12月末=100)は2009年2月を底に反騰に転じています。この指数のピークは2007年1月の4,455.00、直近のボトムは2009年2月の1,430.65です。つまり、ピークから約68%下落したわけです。
一方、2009年9月末の価格は2504.52、この原稿を書いている時点(10月22日現在)では2500.21と、2月末比で約75%上昇しています。
もちろん、ピークの6割程度にしか回復していませんが、これほどの急落と急騰が1年以内に起こったことは1971年の指数化以来一度もありません。
では、なぜこのような急回復をしているのか、この回復の背景を見ていきましょう。
まず、米REITによるエクイティ・ファイナンス、つまり新規公開(IPO)や増資(Secondary)が活発になっています。米国不動産投資信託協会(NAREIT:Historical Offerings of Securities 2009年8月)によれば、2009年初から8月までに実施された米REITの新規公開は5件・約1700億円、増資は62件・約1兆6千億円になっており、このままのペースで行けば、金額ベースでは2004-5年の3.5兆円に肉薄すると考えられています。さらに、2009年の一件あたりの平均調達額は約260億円、ピークの2004年(件数:266件、調達額:約3.5兆円)の約131億円の2倍となっており、資金調達の大型化が考えられます。通常、増資は株価の希薄化懸念を招き、株価が下落してもおかしくありません。しかしながら、40件の公募増資が集中した2009年第二四半期には約1.2兆円が調達され、REIT価格は反転上昇をし始めたのです。
米REITの復活がもたらすもの
では一方、株式市場がREITの大量の資金調達を好感している理由は何でしょうか。これは次のような要因が考えられます。
(1)ピークから6割以上も下がった米REITに割安感が生まれ、その中でエクイティ・ファイナンスが可能な体力のあるREITへの期待感。
(2)特に、サブセクターである商業不動産市場(リテール、工場)の戻りが鈍い。今後、このセクターが再編されてREIT価格が上昇するかもしれないという思惑。
(3)個人投資家、特にリタイアメント世代の資金選好性によるREITへの割安感とマッチした資金流入の可能性。
もちろん、REITにはリスクもあり、ボラティリティも高いので、一般の株式投資同様のリスク感覚は持っておかねばなりません。また、米REITの資金調達が一過性ではないと言い切れるものでもありません。しかしながら、少なくともREITの復活は米国不動産市場への不信感や危機感を和らげ、市場に期待感が芽生えているのは間違いないでしょう。
単なるストラクチャーではなく、積極的な資金調達と開発力で生き残りを図る米REIT。金融市場の混乱に最も影響を受けやすいのは、いつの世も不動産セクターですが、米国がサブプライム問題に端を発した金融危機を乗り切ることは、世界経済回復の端緒になることは間違いありません。これからも米REITの動きからは目を離せないでしょう。
米REITの歴史と今
まずREIT(Real Estate Investment Trust)の歴史を振り返ってみましょう。
REITは米国において、Bradley Real Estate Investors社他5社が1961年に組成したものが最初のREITと言われています。それらの多くはニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場しています。米国REITも不動産投資の税制優遇が受けられるストラクチャーですが、日本やオーストラリアのREITと異なり、内部運用や自らの不動産開発が認められています。
既にいくつかのREITがS&P500にも組み入れられるようになり、ポートフォリオにおけるリスク分散のための投資先の一つとして投資家の信頼性も高まってきています。アメリカにおいては、インカムゲイン、キャピタル・ゲイン双方の高い利回りと成長性を有する金融商品であるとともに、不動産デベロッパーとしての機能も有しています。
例えば、アメリカ最大手のREITであるSimon Property(株式時価総額:約1.8兆円)は、その傘下のChelsea Premium Outletと三菱地所とのジョイント・ベンチャーで日本各地にアウトレット・モールを展開しています(御殿場・佐野プレミアム・アウトレットなど)。また、倉庫・工場施設の大手REITであるPrologis(プロロジス)が、日本においてプロロジスパークという名称で物流センターを展開しています。
単純に不動産を所有して家賃収入を得るといった機能に加え、自らビジネスモデルを考え、積極的に不動産ビジネスを創出する企業と言ってもいいでしょう。
リーマン・ショック後のREIT価格
さて、リーマン・ショック後に価格が急落した米REITですが、その指数(NAREIT総合指数:1971年12月末=100)は2009年2月を底に反騰に転じています。この指数のピークは2007年1月の4,455.00、直近のボトムは2009年2月の1,430.65です。つまり、ピークから約68%下落したわけです。
一方、2009年9月末の価格は2504.52、この原稿を書いている時点(10月22日現在)では2500.21と、2月末比で約75%上昇しています。
もちろん、ピークの6割程度にしか回復していませんが、これほどの急落と急騰が1年以内に起こったことは1971年の指数化以来一度もありません。
では、なぜこのような急回復をしているのか、この回復の背景を見ていきましょう。
まず、米REITによるエクイティ・ファイナンス、つまり新規公開(IPO)や増資(Secondary)が活発になっています。米国不動産投資信託協会(NAREIT:Historical Offerings of Securities 2009年8月)によれば、2009年初から8月までに実施された米REITの新規公開は5件・約1700億円、増資は62件・約1兆6千億円になっており、このままのペースで行けば、金額ベースでは2004-5年の3.5兆円に肉薄すると考えられています。さらに、2009年の一件あたりの平均調達額は約260億円、ピークの2004年(件数:266件、調達額:約3.5兆円)の約131億円の2倍となっており、資金調達の大型化が考えられます。通常、増資は株価の希薄化懸念を招き、株価が下落してもおかしくありません。しかしながら、40件の公募増資が集中した2009年第二四半期には約1.2兆円が調達され、REIT価格は反転上昇をし始めたのです。
米REITの復活がもたらすもの
では一方、株式市場がREITの大量の資金調達を好感している理由は何でしょうか。これは次のような要因が考えられます。
(1)ピークから6割以上も下がった米REITに割安感が生まれ、その中でエクイティ・ファイナンスが可能な体力のあるREITへの期待感。
(2)特に、サブセクターである商業不動産市場(リテール、工場)の戻りが鈍い。今後、このセクターが再編されてREIT価格が上昇するかもしれないという思惑。
(3)個人投資家、特にリタイアメント世代の資金選好性によるREITへの割安感とマッチした資金流入の可能性。
もちろん、REITにはリスクもあり、ボラティリティも高いので、一般の株式投資同様のリスク感覚は持っておかねばなりません。また、米REITの資金調達が一過性ではないと言い切れるものでもありません。しかしながら、少なくともREITの復活は米国不動産市場への不信感や危機感を和らげ、市場に期待感が芽生えているのは間違いないでしょう。
単なるストラクチャーではなく、積極的な資金調達と開発力で生き残りを図る米REIT。金融市場の混乱に最も影響を受けやすいのは、いつの世も不動産セクターですが、米国がサブプライム問題に端を発した金融危機を乗り切ることは、世界経済回復の端緒になることは間違いありません。これからも米REITの動きからは目を離せないでしょう。
フィデリティ投信株式会社
インベストメント・マーケティング部長
太田 創
提供:有限会社イマジネーション
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