

医療用精密機器の分野で、圧倒的な強さを見せてきた富士フイルム―― だがもちろんこれまで、たしかな成功を勝ち取るために、日頃の研究活動こそ欠かせないものだった。富士フイルムの研究開発費は、08年度、2000億円を計画。これは国内海外の売上合計の、およそ10%弱と高レベルなものである。
写真用フィルムメーカーとして最大のライバル、コダック社の研究開発費用を見てみると、
総売上げ高の6%程度だ(04年度参考)。富士フイルム同様、フィルム市場の縮小に苦悩したコダックもまた、医療分野へと事業範囲を拡大させた。果敢に取組んだが、その際、自社にない技術を外部からによってまかなおうとした。恐らくそこが、培った技術を新事業でフルに生かしてきた富士フイルムとの差だったのだろう。2007年、ついにカナダ・オネックス社に医療事業を売却した。コダック社の株価は、07年12月に22ドルを超えていたが、08年5月の終わりには13ドルを割り込み、12月19日現在、6ドル近辺まで下げている。2007年の暮れ以降、コダックはその成長性を疑問視され、投資家が一気に離れていったことがチャートからも見て取れるだろう。
「当社には、多様性を認め合い、伸ばしていく風土がある。FCRの開発にしても、当時はまさに異端でしかなかった。しかし今では、FCRは格段の進化をみせ、デジタルマンモグラフィなどの分野などいまや世界に浸透していますから」(ライフサイエンス事業部長 戸田雄三氏)
こんな話をご存知だろうか。森の中で一本の木が倒れた。そこに苔が生い茂り、様々な小虫がやってくる。小虫を食べに小鳥がやってきて、小鳥を狙った大きな鳥が、さらに野の獣たちがやってくる。倒木は、風雨を受け少しずつ土に溶けてゆき、森の養分となり、そこにポトリ落ちた花の種子が濃い養分を吸い上げ、やがて美しい花が咲き…… 自然界において、すべての輪廻のスタートとなるこの倒木のことを「ナース・ログ」と呼ぶ。
富士フイルムは2006年4月、技術分野や組織の壁を取り払い、さらなる“技術の横断”を目指した『富士フイルム先進研究所』を設立した。医療用精密機器や医用画像情報ネットワークシステム、新薬開発、そして新たにスタートさせた「アスタリフト」などのヘルスケア商品。すべての事業に、フィルム事業の遺伝子が生かされ、それは富士フイルムの「ナース・ログ」となって、今も息づいている。今後も世界経済の行方もしっかり見据えつつ、日経225採用銘柄として、富士フイルムが世に打ち出す新たな成果に注目、期待したい。


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