

先ごろ、アサヒビールから圧倒的な数字が発表された。08年度、主力ブランド『スーパードライ』の発売数量が、20年連続で1億箱(!)を超えたというのだ。アサヒビール全体では、発泡酒と新ジャンル系を除いたビールシェアで5割を超えた。これは同社の最強ブランド『スーパードライ』によるものだ。
この、“圧倒的”に日本人に飲み続けられる『スーパードライ』が誕生したのは、1987年の3月のこと。しかし、ご存知の方も多いだろうが、“ドライ以前”のアサヒは、ビール会社としては本当に惨たんたるものだった。80年代当時、業界に君臨する絶対王者は、常に60%前後の圧倒的シェアを誇るキリンだった。“北海道の雄”サッポロも、およそ20%をキープ。対してアサヒは、85年の国内ビールシェアで過去最低の9.6%を記録。シェア9.2%まで追い上げてきていたサントリーに、尻尾をつかまれる寸前だった。
この状況から“奇跡の”復活を遂げ、業界地図を一気に塗り替える起爆剤となったのが『スーパードライ』だ。その復活劇を、ここでは株価の動きを通して分析してみたい。1987年3月、『スーパードライ』は関東地区での限定発売にて熱烈な支持を受けると、その後全国で発売された。出荷量は日を追って増加の一途。株価的にも、87年3月半ば、アサヒの株価は1000円台にあったが、関東から全国へとスーパードライが広がっていくのと歩調を合わせるかのような動きで、4/9には1200円を突破。6/11、終値ベースで1818円まで上昇していった。対する王者、キリンは、87年3月半ばころ、株価1800円の中ごろに位置。アサヒの勢いにつられる動きで、5月のGW明け、2700円半ばくらいまで、こちらも上昇している。
同年7月26日にはこんなこともあった。全国の主要新聞45紙に、1ページ全面を使い、樋口社長(当時)の名前で「アサヒビール品切れお詫び広告」を出したのだ。投資家たちもすぐに反応し、翌日のアサヒの株価は、前日比で27円プラスの1663円に。この1年を通して見た株価の動きでは、アサヒが年初からの上昇率が40%だったのに対して、キリンは30%ほどの上昇。サッポロは15%ほどの上昇にとどまった。バブルの勢いに乗って伸び行くビール業界の中でも、マーケットは、見事な復活劇をとげ、今後の成長性を期待させるアサヒの姿を最も評価したという事実が、この上昇率40%の中には秘められている。
その後アサヒはさらなる快進撃を見せつけ、ついに1999年1月12日、新聞各紙の夕刊で、アサヒが平成10年の年間出荷量でキリンを上回ったと発表。実に45年ぶりの首位奪還だった。


上図チャート中の、1997年7月ころの動きに注目して欲しい。マーケットの中でアサヒがどれほど期待を集めた銘柄かが、特に顕著なポイントだ。バブル崩壊のあおりを受けて、株価のアップダウンを繰り返していたビールメーカーだったが、両社が完全に水をあけたのがこの97年7月だった。6月の中間決算で、キリン、サッポロが相次いで減益を発表する中、増益を示したのはアサヒのみ。まさに業界“ひとり勝ち”が確定したニュースが流れると、キリン、サッポロがバブルのツケを払うかのように日経平均と共に株価を下げていく中、シェアをどんどん獲得していくアサヒの株だけが逆行高を見せた。97年末には、なんと年初来上昇率70%を突破。スーパードライ発売開始から10年が経っていたアサヒだが、その間の成長性を、マーケットが高く評価した証と言えるだろう。
このような企業対企業による“シェア争い”が、即投資家に注目される大きなファクターとなるのは言うまでもない。業界で言えば、アサヒやキリンなどが火花を散らす「ビール」や、「半導体」、「自動車」、「太陽電池パネル」などが有名なところだ。直近では、今後主流となることが予想されている電気自動車関係が注目されている。電気自動車を開発するメーカーが、どの企業の電池を採用するかで、その後の電池メーカーの成長性、ひいては株価まで見通せることとなるからだ。電気自動車を他社に先がけ、今年秋にも販売する予定の「三菱自動車」が採用した電池メーカ-は「GSユアサ」だった。結果、08年の株式相場で「GSユアサ」は人気化。08年1月頃、200円台前半にあった株価は、6月19日には630円まで上昇。半年で300%のパフォーマンスを記録した。もちろんその後はサブプライムローン崩壊やリーマンショックによる金融危機を受けて下落、調整を余儀なくされたが、テーマ性を持った、今後成長が見込まれる分野で活躍が期待できる企業は、現在の下げ相場の中にあってこそ、よりその存在感を増すことになるだろう。「GSユアサ」の株価はその後持ち直し、現在、直近高値を試す展開となっている。
またもう一つ、違う角度から投資的視点を紹介するとするならば、「シーズン・ストック」というものがある。これは、季節要因で毎年同じようなチャートを描きやすい株のことを指し、アサヒビールもこれにあたる。たとえば“今年の夏は暑い”という長期予報がニュースで流れれば、事前にビールメーカーの株式を取得しておいて、夏場の株価上昇に備える……という具合だ。08年夏のアサヒビール株価を見てみると、6月前半に1800円半ばあたりにあった株価は、同月26日には2010円まで上昇。その後いったん下落して、株価は7月前半にまた1800円半ばに位置する。再びそこから上昇を始め、8月5日には2040円まで買われていった。このように、昨年は2度波がきたのがわかるが、世界経済の減速もあり、09年はこの投資手法は当てはまらない可能性の方が高いと見るのが妥当かも知れない。

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