


M&Aといえば、昨年ビール業界を最も賑わせたニュースが「バドワイザー」買収劇だろう。ベルギーのビールメーカー「インベブ」が、バドワイザーブランドを持つ「アンハイザー・ブッシュ」を500億ドル(1ドル100円換算で5兆円)で買収した。アンハイザーは時価総額が3兆円をはるかに超える、業界のモンスター企業だ。このM&Aにより、売上高4兆円超、ビールの世界市場でシェア25%を占める、世界最大のビールメーカー「アンハイザー・ブッシュ・インベブ」が誕生した。そんな中にあって、つい先頃、アサヒが中国・青島ビールにおよそ20%出資するというニュースが流れた。それもあの“モンスター”アンハイザーから株式を取得するという。
「欧州や北米のようにビール文化がしっかり根付いているような“成熟市場”には、『スーパードライ』一本で売り込んでブランド価値を高めていくことが今後の命題ですが、中国のような“成長市場”ではそうはいきません。中国では大瓶ビールの値段がたったの5元ほど。ドライはプレミアムビールの位置づけになります。中国でまず行うべきことは、地元企業と共同で地元ブランドを生産して、それを売ることで「アサヒ」というブランドの下地作りをすること。そのうえで徐々にスーパードライに馴染んでもらおうという戦略ですね。さらに今後は韓国、フィリピン、ベトナム、タイなどのアジア圏へもさらに進出し、またビール事業以外でも、農場や牧場経営などのビジネスを展開します。アジア全体で『安全・安心』の代名詞的な地位を勝ち取ることが、今後の大きな目標ですね」 (中井氏)
これでアサヒは、青島ビールの営業網が活用でき、成長を続ける中国市場でスーパードライの販売強化ができることになる。成長市場の中国で、アンハイザーが青島ビールの株式を手放さなくてはならないのは、このたびの金融危機を受けてのことだろう。アンハイザーは昨年、従業員の6%にあたる1400人のリストラを決行した。株価の動きも、買収が決定した時こそ上昇したもののその後は一気に下落、08年年末には、買収発表時から1/3にまで下げてしまった。また、ユーロの下落もアンハイザーには痛いはず。逆に、独歩高を続ける「円」は、アサヒのM&A戦略にとって追い風だ。グローバル企業は、海外を舞台に多くの仕事を行う。世界の為替動向は、今も昔も投資家必須のチェック項目だ。
戦いの場を世界へ移し、躍進を続けるアサヒビール。いつかは世界メジャーと対等の企業に、また「ハイネケン」、「バドワイザー」と肩を並べる銘柄に『スーパードライ』は成長するかも知れない。それを可能とするのは、日本の厳しい消費者に鍛えられた経験と、鮮度にこだわった独自の高い生産技術。この未曾有の経済危機で、多くの企業が資金難で苦慮している中、安定的キャッシュを生み出すビール会社は、今投資家から熱い注目を集めている。アサヒのチャレンジに期待したい。


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