
米国に端を発した今の金融危機。日本が90年代に経験した資産バブル崩壊とはどう違い、どこが似ているのか。景気回復のきっかけとなるのは何か。個人投資家はどんな構えで、資産運用にのぞむべきか。ファンドマネジメントのスペシャリストで、気鋭の経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元(やまざき・はじめ)氏に聞いた。

アンケートの「プロに相談したいこと」の欄に、「マネーの世界にプロはいない」と答えていたアマチュアの方がいました。これは半分当たっていて、半分は当たっていない。
当たっている面は、儲かる銘柄は何かとか、これ以上は下がらないとか、ここのタイミングから上がるとか、そう意味での特別な情報や特別な判断力は、プロにあるわけではないという点です。
ただし、たとえばここに100億円のおカネがあって、たとえばトヨタやパナソニックを買うとき、何パーセントぐらいのウェイトで持ったらいいのか。それを決めて、バランスをとって、無難な運用をする方法をプロは知っている。この点はアマチュアにはできないかもしれない。
もっとも、それも平均点付近(インデックス並みのパフォーマンス)を確保するということであって、平均点よりもプラスアルファをプロが作ることができるかというと、そういう都合のいい能力はないんです。
ここのところは、プロの側もアマチュアの側も、日本はまだあまり成熟していない。「プロなんだからもっとできて当然だろう」ってアマの方が思われても、本当にできるんだったらプロは自分のカネを運用するはずです。そこを理解しないといけない。
プロは、自分のカネを運用するのではなく、素人から手数料をもらって食べている。「お客様のために」というのは営業用であって、プロが本来目指しているのは、手数料をかせぐこと。その意味で、プロに対して油断をしてはいけないし、甘く見てはいけない。
「プロに相談したいこと」の欄に、たとえば「確実に儲かる方法」を教えてほしいとか、「底値はいくらか」「株価はいつ上がるか」を教えてほしいなどとありました。
プロはもしかすると教えてくれるかもしれないが、その答えは信頼できない。プロの側も「自分たちは特別によく知ってるんですよ」というフリをして商売をしてますよね。ここのところが十分成熟していないといえば成熟していない点です。

今回の信用危機/金融危機はもちろん大ニュースにふさわしく、「注目マネーニュース」では、プロ、初心者いずれもトップに選んでいます。ただ私自身は、これは特別な危機ではなく、普通の景気循環のなかの1現象、普通のバブル崩壊だと考えています。
好景気になると通常、終盤は投資対象がなくなって、不動産価格が上がり、不動産に対する過剰投資が起こりやすくなります。
多くが「こういう調子で需要が伸びる、オフィスはどんどん増える」と考えて、オフィスに投資します。また消費者はみんな、自分が金持ちになってきたと錯覚しているから、どんどん住宅を買う。こういう状況で不動産への過剰投資が起こって、それが不良債権化する。これは、ごく普通の景気循環現象で、日本でもあった。
ただ、事態が変化するスピードは格段に速い。日本のバブル崩壊の数年間を、今は数カ月でやっている感じです。
米国の不動産価格はだいたい2006年にピークをつけました。フェアな価格からみて40~50%高かった。ここまで20数%下がってきましたが、まだ15~20%下がり足りない。今のピッチで下がるとして、最低あと1年は不動産価格の下落は続きそうです。
不動産価格の下落が続くということは、証券化商品の損も拡大するし、金融機関の損はどんどん膨らんでいく。
もっとも日本の不動産価格は89~90年、フェアな価格の2倍以上に上がりました。その点、不動産・株式のバブル崩壊の影響は、日本よりもましだと思います。米政府・FRB、各国当局の手の打ち方も、日本のときよりも速い。
2007年夏にサブプライムローン問題は大変だ、ってことになって、株価がガタガタした。それが日本の92-93年の感じです。
2008年9月15日のリーマンショック、そして、お金が凍りついて中央銀行が市場に大量資金供給し、政府が銀行への資本注入を決めた。これは日本の97年に相当します。2008年12月現在は、98年ぐらいのところをやっている。
98年というのはどういう年だったかというと、日本が低成長下で、マイナス成長になったのが3回あって、93年度、98年度、2001年度です。そのなかで最悪だったのが、98年度のマイナス1.5%でした。
そういう時系列の比較でいうと、2009年はどう考えても明るくないんですけど、そこら当たりが株式投資のチャンスだと思います。

余裕あるお金を持っている人は、これからどこかのタイミングで株式市場に飛び込むのでしょうが、ただし飛び込むタイミングはむずかしくなってきました。
9月にリーマンショック後の株価急落で日経平均が1万円を割った時点では、利益に対して、株価は確かに安かった。ところが12月中旬の今は、利益に比べて株価が安いのかどうか、はっきりいえない。利益自体が下がってきてしまったからです。
たとえば日経平均をひとつの銘柄に見立てて、1株利益を計算すると、587円です(12月9日現在、日経平均8395.87円÷225種予想PER14.31円=586.7円)。ところが同じ計算を10月31日にすると、700円あった。この間に、利益予想が減っている。トヨタの減益が大きかった。
いつも私は、長期国債(10年債)の利回りとの関係で、株価の高低を判断しています。たとえば今の長期国債は1.39%です。株式のリスクプレミアムを6%とすると、株式の益利回りは7.39%(=1.39+6)。1株利益587円が7.39%だとすると、日経平均の適正価格は7939円になります。
株式のリスクプレミアムはだいたい5~7%で、5%だと株価がちょっと高い、7%だと株価はいくらなんでも安い、6%で標準という感覚でしょうか。
ただし、これは成長率ゼロの場合です。エコノミストの景気アンケート(日経新聞12月10日朝刊)では、2009年の実質成長率はマイナス0.9%でした。そうなると、益利回りは8.29%(=7.39-▲0.9)。そうなると日経平均の適正価格は7077円です。1株利益がもう1割減るとすると、その90%ですから、6369円。
したがって、6000円台ぐらいの株価があってもおかしくはないと覚悟したうえで、ただし、6000円台まで突っ込むかどうかはわからないから、自分でココが底と判断したところで飛び込む。そうしないとチャンスを逃すかもしれない。

投資の方法としては、3つの方法をお勧めしています。第1は、TOPIX連動型の上場投資信託を、どこかのタイミングで目をつぶって買う。
第2は、もうひとつは優良銘柄を底値買いをする。気分はウォーレン・バフェット、というところです。結構な大企業で、財務体質もしっかりしているはずなのに、株価が安いという銘柄があります。
ただし注意点は、トヨタ、キヤノン、ソニーといったいわゆる優良株が、もうかる会社である、という常識がもしかすると変わるかもしれない、ということです。そこはよく考える必要があります。
もちろん優良株を買うにしても、1銘柄だけじゃなくて、いろんなものを買う。いわゆる優良株は輸出企業が多いので、内需型、かつ不景気のときに安定している、食品や医薬、不動産の超大手など、これはゼッタイ、という絶対的な強みを持っている企業を安くなったところで買う。なるべく業種を分散させるのがコツです。これが第2。
第3は、もっと大胆な方法です。相場全体がリバウンドするときに、つぶれかけでつぶれなかった企業の戻りは大きい、という経験則を利用します。
たとえば東証1部で、100円割れ、配当をしていて、自己資本比率が25%程度、という条件でスクリーニングすると、数十銘柄出てきます。1銘柄で10万円以下、それをたとえば30銘柄集めた300万円の「ボロ株パック」にして、タイムカプセルに入れておく。
これはジョン・テンプルトンという人が、まだ運用会社をおこす前にやった方法です。それまで相場は低迷し続けていたんですが、第2次大戦がおこったころ、「もうそろそろだろう」と判断して、1ドル未満の銘柄をすべて、100株ずつ買ってくれ、と注文した。買えたのが104銘柄で、投資額は1万ドル。4年後に全部売っぱらったとき、4万ドルになっていましたというエピソードがあります。
不景気を抜けた後、「ボロ株パック」30銘柄のうち、3つ、4つはつぶれているかもしれない。けれども、3つ、4つが200円になっていればチャラです。実際はそれ以上の株が上がっている可能性があるのではないでしょうか。(談)
おすすめ情報
PR
最新コラム
- IMF「ユーロはやや高すぎ」 - 11月25日
- ドル/円相場・昨日の解説と今後の見通し - 11月25日
- 成長は続く?バークシャー・ハサウェイの未来 - 11月25日
- 11月は生命保険を考える月 - 11月25日
- 今夜の注目材料はこちら☆ - 11月24日

