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山崎元氏と森永卓郎氏が語る2008年回顧と2009年展望山崎元氏が語る2008年回顧と2009年展望
今回の金融危機と、過去30年続いた“市場重視の経済運営”はどう関係しているのか。そして投機資金はどこにいったのか。「米国がくしゃみをすると、すぐ風邪をひく日本」はこれからも続くのか。長年、“異端のエコノミスト”として金融資本主義を批判し続け、「今や、金融戦国時代は終わった」と語る森永卓郎氏に聞いた。

今回のアンケート結果で面白かったのは、たとえばマネーニュースランキングの順位で、初心者とプロの答えで有意な差が見られなかったことです。

この点は、じつは今回の金融危機の本質をついています。

どういうことかというと、今回の金融危機の大きな原因は、「プロの方が能力が高い」という、多くの人たちの妄想だったからです。

投資銀行の人が「先を読む力が強い」なんてことは100%ないし、能力が高いということも、ほとんどない。ところが、素人(しろうと)は「彼らの方が自分たちよりアタマがいい」と思い込んでしまっていた。

彼らは先見性があって、いい企業を選び出すことができる、だから高い利回りをとれるのだ。彼らは金融工学の知識がある、だから高い利回りをとれるのだ──という具合に世界中が勘違いをした。

投資銀行家の側は、期待されているから、高い利回りを出さなければならない。それで考えついた仕組みが、目先の利回りを高めて、そのためにリスクもうんと高くしちゃうインチキだった。

そのインチキがはじけたのが、初心者、プロのどちらもニュースランキング1位・2位に選んだ「サブプライム問題に始まる金融危機」、「リーマンショック」だったわけです。

投機マネーは消滅した!?

今回の金融危機で、投機資金は行き場がなくなり、消滅した、と私は思っています。

投機資金の源流は、1980年代初頭、金融ビッグバンによって生まれました。その後、M&Aで企業を乗っ取って丸裸にする、いわば海賊行為を展開して、成長してきました。

この投機資金が、過去10年、悪意を持つようになった。

アジアの金融危機のときは、韓国、タイに対して通貨売りをしかけた。両国は応戦したけれども、手持ちのドルがなくなり、資金繰り倒産した。

そこに乗り込んで、二束三文で不動産と株式を買い占めた。でも資金繰り倒産だから、カネが回り始めれば、すぐ立ち直れます。韓国はわずか10カ月で劇的に回復し、そのタイミングで彼らは売り抜け、大もうけした。タイでも同じです。

そのカネが今度は日本に来た。第1波は98~99年。日本政府に不良債権処理を進めろ、と圧力をかけながら乗り込み、銀行を追い詰めて融資先の不良債券をしゃぶりつくした。第2波は2003年。メガバンクを狙い打ちし、株価が下がったところをがっさり買い、株主責任を追及しない形で政府に公的資金を入れさせ、高値で売り抜けた。

そこで儲けたカネが、米国の不動産投機と、金融工学が作り上げた、レバレッジを効かせたインチキ金融商品に向かったんです。

ところが、100%勝てるバクチの不良債権処理と違って、不動産投機は無限にはできない。もうダメだと思って逃げ始めたのが、2006年秋です。そのカネは原油と穀物に向かった。原油、穀物はドーっと上がって2008年夏にピークをつけて反落した。

けれども今度は逃げ場がなかった。逃げ場がないとき、お金は消えてしまう。今回は消えてしまったんですね。

次のバブルは、CO2排出権取引

金融業界のなかで、もう1回バブルを起こそう、っていう動きがあるのは確かです。そうしないと、高いリターンは得られないですから。そして、その対象は、二酸化炭素の排出権取引だと語られています。

そこでバブルが再び起こるかどうか、正直よくわかりませんが、私は今「金融戦国時代」は終わったんだろう、と見ています。

11月15日のG20緊急首脳会合(金融サミット)で、仏大統領のサルコジは「レッセフェール資本主義は終わった」といいました。弱肉強食資本主義は終わった、つまり「戦争」は終わったということです。

「金融戦国時代」とは日本の戦国時代の比喩なんですが、じつは日本のあの時代も、金融資本主義だった。信長が関所を廃止し楽市楽座を作った。これは規制緩和・民営化路線です。永楽銭を通用させ、兵士をカネで買うようになった。そして、どんどん領土を広げ、奪い取った土地を武将へほうびとして与えた。投機資本がやったこととまったく同じです。

ところが秀吉が全国統一をやって、行き詰った。奪う土地がなくなったからです。だから秀吉は朝鮮出兵した。この時点でもうバブル崩壊なんです。

戦国時代が終わった後、なにが起きたか。江戸の安定した300年です。じつは戦国時代の前も、室町の安定した300年です。

結局、今われわれが認識しなければならないのは、今までの30年間が異常だったということです。カネがカネを稼ぐなんてことはない。現場の労働者が汗水たらして働くことによって、付加価値が生まれるんです。

「プロが選ぶ2009イベント」を見ると、オバマ大統領関連が多い。それだけ米国の政策がマーケットで注目されているということです。

彼は、サッチャー、レーガン以来の過去30年の政策をすべてかなぐり捨てて、今まで主流派が否定してきた金融緩和や大規模財政出動をやるんだと思います。それは方向として正しいと思う。正しいけれども、米国は時間がかかる。

というのは、米国の不動産は、2倍になったものが2割下がった段階ですから、まだもう少し下がる。

また米国の家計は400兆円もの借金をかかえている。短期的にちょっと借金して、ボーナスで返すってのはいいですよ。でも長期にわたって、稼いでもいない額を使い続けたら、破産するんですよ、普通。

400兆円を返すのに、私は10年かかると思う。1年で40兆円。米国のGDPがざっと1500兆円、うち個人消費が1000兆円。そのうち4%ずつ返していくんです。その分、消費が減り、それを公共事業などで埋めていこうとするわけだけど、そのままだと国の財政が破綻してしまう。

オバマは金持ちから税金を取ると言っています。それができたらすばらしいと思うけど、金持ちから税金を取ることほどむずかしいことはありません。

米国の致命的な欠点は、モノづくりはしているが、強い商品は戦車、ミサイル、爆弾、旅客機、PCのOSぐらいで、それら商品に価格弾力性がないことです。

不況やデフレに陥ったとき、普通は、為替を安くして、輸出ドライブをかけて、脱却するんです。でも、ミサイルやボーイングが半額セールスをやったからといって、買い手は増えない。

これが欧州製品だと、全然違う。シャネル半額、ルイヴィトン半額になったら、みんな買うでしょう。

私は、米国はずるずる落ちていくんだと思います。そして健全な農業国として再生すべきだと私は言っています。

日本の対米政策はどう変わる?

この点で、日本の総選挙、政界再編も2009年に要注目です。日本には「アメリカがくしゃみをすると、日本が風邪を引く」というバカな神話を信じている人が多いですが、2008年10月の貿易統計でみると、日本の輸出で米国向けは17%アジア向けは49%、ほとんど5割です。

米国にしがみついていけば、タイタニックにしがみつくようなことですから、一緒に沈んじゃう可能性はあります。だから早く手を離せ、と言っているんです。

日本の麻生政権の後に、総選挙で民主党が政権をとったときに、米国とどうつきあうのか。自民党は米国の子分でいく路線だった。共産、社民は、ついていかない路線。民主はどうなのか。これは民主党内でも、まだ意見が統一されていない。ここは注目点ですね。(談)

第1弾特集 2008年度プロとアマが選んだニューストップ10

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