世界の金融機関は想像以上に悪化している模様
2008年05月29日市場は静かだが
5月ももう終わりに差し掛かっていますが、市場はここ1月ほど非常に静かな展開となっています。昨年末から今年の3月までは株・ドル・金利が急落し、世界中の投資家の多くが悲鳴を上げるほどの混乱となりましたが、ベア・スターンズ救済のニュース以来市場は落ち着きを取り戻し、だいぶ回復してきたという展開です。ただこの一月ほどは回復基調も止まり、多くの市場がほぼ横ばいという状況になっています。
金融機関のリストラは予想以上
こうした中で実は金融機関が物凄いリストラを進めています。ある調査によればサブ・プライム問題が激化した昨年9月以来の累計では8万人以上に上っていることが明らかになりました。しかもそのうち約4万人は最近1ヶ月で解雇されています。
東京で働く筆者の知人にも最近突然解雇され就職活動を余儀なくされているファンドマネージャーを初め、半強制的に希望退職に応募させられた人等、既に両手では余るほどの人が会社を不本意な形で去っています。金融業界は既にかなり不景気になっていますので、同じような職を探すのは大変な状況です。
筆者は米国の不動産市場の過熱、またそれが景気を大きく嵩上げしている効果から、一旦不動産市場が縮小に転ずれば大きな影響がでるのではないかと数年前から当コラムでも指摘してきましたが、最近の状況は当初の予想をはるかに上回る深刻さです。足元の各金融機関の体力は筆者の予想以上に落ちている可能性が極めて高く、仮にそうであればこの先も景気はかなり弱い状況が長く続く可能性があると見たほうが良いのではないかと思っています。
「救済」を喜ぶよりも「破綻した」という事実に注目すべき
話は変わりますが、ベア・スターンズが救済された時、市場参加者は安心感を抱き、それ以来株式市場が回復しています。これは「当局がいざとなれば助けてくれる」、「大きな会社は少なくとも潰さないというのが当局の方針」という安心感です。しかし、果たしてそれは本当に安心できることなのかどうか、筆者はずっと不思議に思ってきました。
筆者は、そもそもベア・スターンズという米国でも相当に大きな金融機関が実際に「破綻した」という事実を重く受け止めるべきだと思っています。確かに同社は救済されましたので今もビジネスを続けていますし、連鎖倒産も当然のことながら免れています。今のところ本当に甚大と呼べるような影響は広がってはいません。
ただ、あれだけ大きな会社が実際に破綻するということは、他にも破綻寸前まで弱っている会社が多々あり、その中の氷山の一角が破綻したと見るほうが自然だと筆者は考えます。弱っている会社がたくさん存在しているということは、世界の「金融システム」そのものが弱っているということです。
「金融システム不安」は一朝一夕では解決しない
金融システムが相当に弱っているというのは、上述のリストラの状況からも裏づけられます。まったく「安心」とか「楽観」をできるような状況ではないと思っておいた方が良いと思います。
仮に金融システムが人々の想像以上に弱っているとしたら、この影響は甚大です。この問題はすぐに解決できるものではなく、ゆっくりと時間をかけないと解決できないという点で非常に厄介です。
日本でも90年代後半に長銀、山一證券、三洋証券、北海道拓殖銀行といった大手金融機関が相次いで破綻しましたが、その原因は「資産が焦げ付き、その損失に体力が耐えられなくなったと周囲からみなされ、誰も助けてくれない状況となった」という点で共通しています。ベア・スターンズの場合もまったく同じです。日本の場合はバブル時代の「土地」に対する過剰な融資が地価の下落により返済不能になり、大きな損失が発生しました。ベア・スターンズの場合は、不動産ローンの証券化商品の価値が地価下落・景気悪化により暴落し、大きな損失が発生しています。
この損失が最終的にどの程度の規模になるのかは、もちろん、土地や商品の値段にかかっています。その価値が下がり続ければ損失は膨らみ続けますし、回復すればどこかで損失の拡大が止まります。現在の米国の状況では土地の値段まったく下げ止まっておらず、景気が本格的に悪化するのはこれからが本番という状況です。損失はますます膨らむと見ていいでしょう。
しかも、この損失は最終的にどの程度になるのかが不透明ですので、実際に「損失処理・計上」をどのように進めるか、実に恣意的に行うことができます。現在の米国の状況はこの処理を始めたばかりという状況です。当局も当然損失処理を進めていくように指導していますが、いっぺんに損失計上すればそのまま破綻してしまうような金融機関が非常に多いので、当局も相当に甘めの基準で処理させています。リストラの件と同じ調査によれば、既に40兆円ほどの損失処理されているとのことですが、今回はデリバティブが絡んでいることから最終的にどの程度の損失になるのかがまったくもって不明で、100兆円という推計もあれば300兆円という推計もあるという状況です。
筆者は、おそらくもうしばらくすれば、金融機関は「人」のリストラともに、「財務」リストラ、つまり不良債権の損失処理をおそらく市場参加者・投資家が現在想像している以上の規模で進めていかざるをえないことを発表すると見ています。市場では再び悲観論が強まり、株安、金利低下となる可能性が高いでしょう。為替市場ではキャリー・トレードが縮小し、再び円高となる可能性があるということを用心しておいた方が良いと思います。
5月ももう終わりに差し掛かっていますが、市場はここ1月ほど非常に静かな展開となっています。昨年末から今年の3月までは株・ドル・金利が急落し、世界中の投資家の多くが悲鳴を上げるほどの混乱となりましたが、ベア・スターンズ救済のニュース以来市場は落ち着きを取り戻し、だいぶ回復してきたという展開です。ただこの一月ほどは回復基調も止まり、多くの市場がほぼ横ばいという状況になっています。
金融機関のリストラは予想以上
こうした中で実は金融機関が物凄いリストラを進めています。ある調査によればサブ・プライム問題が激化した昨年9月以来の累計では8万人以上に上っていることが明らかになりました。しかもそのうち約4万人は最近1ヶ月で解雇されています。
東京で働く筆者の知人にも最近突然解雇され就職活動を余儀なくされているファンドマネージャーを初め、半強制的に希望退職に応募させられた人等、既に両手では余るほどの人が会社を不本意な形で去っています。金融業界は既にかなり不景気になっていますので、同じような職を探すのは大変な状況です。
筆者は米国の不動産市場の過熱、またそれが景気を大きく嵩上げしている効果から、一旦不動産市場が縮小に転ずれば大きな影響がでるのではないかと数年前から当コラムでも指摘してきましたが、最近の状況は当初の予想をはるかに上回る深刻さです。足元の各金融機関の体力は筆者の予想以上に落ちている可能性が極めて高く、仮にそうであればこの先も景気はかなり弱い状況が長く続く可能性があると見たほうが良いのではないかと思っています。
「救済」を喜ぶよりも「破綻した」という事実に注目すべき
話は変わりますが、ベア・スターンズが救済された時、市場参加者は安心感を抱き、それ以来株式市場が回復しています。これは「当局がいざとなれば助けてくれる」、「大きな会社は少なくとも潰さないというのが当局の方針」という安心感です。しかし、果たしてそれは本当に安心できることなのかどうか、筆者はずっと不思議に思ってきました。
筆者は、そもそもベア・スターンズという米国でも相当に大きな金融機関が実際に「破綻した」という事実を重く受け止めるべきだと思っています。確かに同社は救済されましたので今もビジネスを続けていますし、連鎖倒産も当然のことながら免れています。今のところ本当に甚大と呼べるような影響は広がってはいません。
ただ、あれだけ大きな会社が実際に破綻するということは、他にも破綻寸前まで弱っている会社が多々あり、その中の氷山の一角が破綻したと見るほうが自然だと筆者は考えます。弱っている会社がたくさん存在しているということは、世界の「金融システム」そのものが弱っているということです。
「金融システム不安」は一朝一夕では解決しない
金融システムが相当に弱っているというのは、上述のリストラの状況からも裏づけられます。まったく「安心」とか「楽観」をできるような状況ではないと思っておいた方が良いと思います。
仮に金融システムが人々の想像以上に弱っているとしたら、この影響は甚大です。この問題はすぐに解決できるものではなく、ゆっくりと時間をかけないと解決できないという点で非常に厄介です。
日本でも90年代後半に長銀、山一證券、三洋証券、北海道拓殖銀行といった大手金融機関が相次いで破綻しましたが、その原因は「資産が焦げ付き、その損失に体力が耐えられなくなったと周囲からみなされ、誰も助けてくれない状況となった」という点で共通しています。ベア・スターンズの場合もまったく同じです。日本の場合はバブル時代の「土地」に対する過剰な融資が地価の下落により返済不能になり、大きな損失が発生しました。ベア・スターンズの場合は、不動産ローンの証券化商品の価値が地価下落・景気悪化により暴落し、大きな損失が発生しています。
この損失が最終的にどの程度の規模になるのかは、もちろん、土地や商品の値段にかかっています。その価値が下がり続ければ損失は膨らみ続けますし、回復すればどこかで損失の拡大が止まります。現在の米国の状況では土地の値段まったく下げ止まっておらず、景気が本格的に悪化するのはこれからが本番という状況です。損失はますます膨らむと見ていいでしょう。
しかも、この損失は最終的にどの程度になるのかが不透明ですので、実際に「損失処理・計上」をどのように進めるか、実に恣意的に行うことができます。現在の米国の状況はこの処理を始めたばかりという状況です。当局も当然損失処理を進めていくように指導していますが、いっぺんに損失計上すればそのまま破綻してしまうような金融機関が非常に多いので、当局も相当に甘めの基準で処理させています。リストラの件と同じ調査によれば、既に40兆円ほどの損失処理されているとのことですが、今回はデリバティブが絡んでいることから最終的にどの程度の損失になるのかがまったくもって不明で、100兆円という推計もあれば300兆円という推計もあるという状況です。
筆者は、おそらくもうしばらくすれば、金融機関は「人」のリストラともに、「財務」リストラ、つまり不良債権の損失処理をおそらく市場参加者・投資家が現在想像している以上の規模で進めていかざるをえないことを発表すると見ています。市場では再び悲観論が強まり、株安、金利低下となる可能性が高いでしょう。為替市場ではキャリー・トレードが縮小し、再び円高となる可能性があるということを用心しておいた方が良いと思います。
グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿
提供:株式会社FP総研
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