日本経済大不振で円安だが・・・依然募る不安
2009年02月27日株式市場は相変わらず冴えない中、円安の兆しが現れる
2007年に米国の不動産市場の崩壊とともに始まった株安・円高の流れに、このところ若干ながら変化が見られます。円はここ1年半ほどの間、「リスク回避による円高」が続いてきました。世界の景気が絶好調で株式市場がどんどん上昇していた局面では、「円キャリー・トレード」による円売りが人気を集め円はどんどん下落してきましたが、その流れが反転すると、一転して株安と歩調をあわせるように円高となっています。
しかしながら、ここ数週間の動きを見ると、株式市場は相変わらず冴えない動きが続いているものの、円は対米ドルで97円台、対ユーロで124円、対英ポンドで141円と、ここしばらく見ることのなかった円安水準になっています。
大方の想像を超える日本経済の不振
この円安の背景には、日本経済の想定外ともいえる大不振があります。このところの輸出の不振はすさまじく、4ヶ月連続の貿易赤字・鉱工業生産はつい1年ほど前までは史上最高レベルであったのが、オイルショック以来の低水準まで、半年ほどの間に一気に4割も落ち込むというとんでもないことになっています。
昨年9月にリーマン・ブラザーズが破綻し、世界的な金融危機が深刻化した直後には、日本の金融機関は比較的傷が浅いため、日本経済も他国に比べて落ち込みはマイルドになるとの声が多かったのですが、実際には恐らく世界でも最も深刻な不況に突入することになってしまいました。
これは、為替相場が金融危機によるリスク回避で急激に円高した、というのももちろん大きく作用していますが、それよりも、大方の人々が日本経済の「外需依存体質」を過小評価していたことが、このように景気見通しを誤った原因だと筆者は考えています。今回世界経済全体が落ち込み、中でも日本が最も大きな影響を受けたことで、日本経済の外需依存体質は白日の下にさらされました。
この事実を目の当たりにして、これまで円高投機を行ってきたような人々が、少々円買いのポジションを小さくし始めています。これが、おそらく最近の円安の主因だと見られます。
円安が順調に続く可能性は?
さて、そうした流れを踏まえて今後の為替相場を考えてみましょう。果たしてこのまま為替相場は、「日本経済の弱さ」をテーマにして円安に転ずるのでしょうか?
結論から言えば、筆者は「本格的な円安の可能性はゼロとは言えないものの、それほど高くはない」と見ています。
その理由は、これまでの円高の背景にあった株安・世界経済の混乱という「リスク回避要因」に改善が見られないどころか、もう一段の株安・混乱の可能性が高まっているような気がしてならないからです。
最も気になるのは12月末以降の世界的な金利上昇です。ここ2ヶ月ほどの上昇は、米FRBが12月に実質的にゼロ金利政策に入り、「量的緩和も選択肢にある」と表明したことで世界経済の底割れが回避されるという楽観論が出てきたこと、また、各国がかなり積極的に財政政策を打つことを表明したため、国債の発行量が激増し、世の中のお金の量が減ってしまうという懸念が出てきたことが背景にありますが、この金利上昇は結果的に景気を確実に冷え込ませる方向に働きます。
しかしながら、現在の経済状況を見るととても金利上昇に耐えられるような状況だとは思えません。米国の不動産市場は改善の兆しすら見えません。金融機関の資本の問題も、日本の「失われた10年」の頃と比べれば対応は早いものの、まだまだ抜本的な対策というものがすぐに行われる可能性は低く、これから数年かけて議論しなければ出てきそうにありません。実体経済が本格的に悪化するのは、まだまだこれからである可能性が高いです。
ヨーロッパに至ってはインフレ率がまだ十分に下がっていないということで、金融緩和が完全に不十分です。そうこうしているうちに、中欧・東欧の新興国の外貨債務問題が深刻化したり、アイルランドやスペインといった不動産バブルが崩壊した国の財政がどんどん悪化してきたりしています。こうした問題に対する各国と欧州中央銀行の足並みは揃っているとは言いがたく、今のところ、様々な意見が百花繚乱となっている状態です。とてもすぐに景気が落ち着くような状況だとは思えません。
こうした事実を踏まえると、確かに日本経済は非常に深刻な状態で、これ以上の円高はヘタをすると90年代後半よりも更に経済を悪化させることも十分にありえる状況ではあるものの、再び世界経済が一段と悪化し、「リスク回避による一層の円高」が進む可能性の方が高いのではないかと見ざるを得ません。状況は間違いなく「100年に一度の状況」です。為替市場でも、今は多くの人が想像もしていないようなことが起きても不思議ではありません。円高が終わったと見るのは早すぎる、と筆者は考えています。
2007年に米国の不動産市場の崩壊とともに始まった株安・円高の流れに、このところ若干ながら変化が見られます。円はここ1年半ほどの間、「リスク回避による円高」が続いてきました。世界の景気が絶好調で株式市場がどんどん上昇していた局面では、「円キャリー・トレード」による円売りが人気を集め円はどんどん下落してきましたが、その流れが反転すると、一転して株安と歩調をあわせるように円高となっています。
しかしながら、ここ数週間の動きを見ると、株式市場は相変わらず冴えない動きが続いているものの、円は対米ドルで97円台、対ユーロで124円、対英ポンドで141円と、ここしばらく見ることのなかった円安水準になっています。
大方の想像を超える日本経済の不振
この円安の背景には、日本経済の想定外ともいえる大不振があります。このところの輸出の不振はすさまじく、4ヶ月連続の貿易赤字・鉱工業生産はつい1年ほど前までは史上最高レベルであったのが、オイルショック以来の低水準まで、半年ほどの間に一気に4割も落ち込むというとんでもないことになっています。
昨年9月にリーマン・ブラザーズが破綻し、世界的な金融危機が深刻化した直後には、日本の金融機関は比較的傷が浅いため、日本経済も他国に比べて落ち込みはマイルドになるとの声が多かったのですが、実際には恐らく世界でも最も深刻な不況に突入することになってしまいました。
これは、為替相場が金融危機によるリスク回避で急激に円高した、というのももちろん大きく作用していますが、それよりも、大方の人々が日本経済の「外需依存体質」を過小評価していたことが、このように景気見通しを誤った原因だと筆者は考えています。今回世界経済全体が落ち込み、中でも日本が最も大きな影響を受けたことで、日本経済の外需依存体質は白日の下にさらされました。
この事実を目の当たりにして、これまで円高投機を行ってきたような人々が、少々円買いのポジションを小さくし始めています。これが、おそらく最近の円安の主因だと見られます。
円安が順調に続く可能性は?
さて、そうした流れを踏まえて今後の為替相場を考えてみましょう。果たしてこのまま為替相場は、「日本経済の弱さ」をテーマにして円安に転ずるのでしょうか?
結論から言えば、筆者は「本格的な円安の可能性はゼロとは言えないものの、それほど高くはない」と見ています。
その理由は、これまでの円高の背景にあった株安・世界経済の混乱という「リスク回避要因」に改善が見られないどころか、もう一段の株安・混乱の可能性が高まっているような気がしてならないからです。
最も気になるのは12月末以降の世界的な金利上昇です。ここ2ヶ月ほどの上昇は、米FRBが12月に実質的にゼロ金利政策に入り、「量的緩和も選択肢にある」と表明したことで世界経済の底割れが回避されるという楽観論が出てきたこと、また、各国がかなり積極的に財政政策を打つことを表明したため、国債の発行量が激増し、世の中のお金の量が減ってしまうという懸念が出てきたことが背景にありますが、この金利上昇は結果的に景気を確実に冷え込ませる方向に働きます。
しかしながら、現在の経済状況を見るととても金利上昇に耐えられるような状況だとは思えません。米国の不動産市場は改善の兆しすら見えません。金融機関の資本の問題も、日本の「失われた10年」の頃と比べれば対応は早いものの、まだまだ抜本的な対策というものがすぐに行われる可能性は低く、これから数年かけて議論しなければ出てきそうにありません。実体経済が本格的に悪化するのは、まだまだこれからである可能性が高いです。
ヨーロッパに至ってはインフレ率がまだ十分に下がっていないということで、金融緩和が完全に不十分です。そうこうしているうちに、中欧・東欧の新興国の外貨債務問題が深刻化したり、アイルランドやスペインといった不動産バブルが崩壊した国の財政がどんどん悪化してきたりしています。こうした問題に対する各国と欧州中央銀行の足並みは揃っているとは言いがたく、今のところ、様々な意見が百花繚乱となっている状態です。とてもすぐに景気が落ち着くような状況だとは思えません。
こうした事実を踏まえると、確かに日本経済は非常に深刻な状態で、これ以上の円高はヘタをすると90年代後半よりも更に経済を悪化させることも十分にありえる状況ではあるものの、再び世界経済が一段と悪化し、「リスク回避による一層の円高」が進む可能性の方が高いのではないかと見ざるを得ません。状況は間違いなく「100年に一度の状況」です。為替市場でも、今は多くの人が想像もしていないようなことが起きても不思議ではありません。円高が終わったと見るのは早すぎる、と筆者は考えています。
グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿
提供:株式会社FP総研
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