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「豪州利上げ」で勢いづく強気派

2009年10月19日

豪州が利上げ実施
 10月6日(火)、今回の大不況後、主要国で初となる利上げを豪州が実施しました。同国の政策金利は0.25%引き上げられ3.25%になりました。

 豪州経済も今回の世界的大不況の影響を他国と変わらず受け、リーマンブラザーズ破綻前まで7.25%あった金利が3.0%まで引き下げられていました。この利下げ幅は一見物凄く大きく見えますが、米国の5.5%→0.25%、英国の5.75%→0.5%と比べれば実は大きくありません。米英が利下げに加えて「量的緩和」を実施していることを考えればなおさらです。

 豪州が米英と異なるのは、この利下げの効果と、主要輸出品である鉱物資源価格の急回復により国内経済に回復の兆しが既に現れていることです。これは、米英の銀行が不動産バブル崩壊でバランス・シートに甚大な影響が出ているのに対して、豪州の銀行は比較的健全であることが大きいです。豪中銀はそうした状況を熟慮した上で、他国よりも早めに「出口」に向けて動くことを決断したようです。

強気派が優勢
 この利上げに対する見方は「強気派」と「弱気派」で異なります。強気派は「世界の利上げサイクルの始まり」、「緊急かつ『異常な』政策からの出口戦略開始」と捉えていますし、「弱気派」は世界経済がこんなに脆弱な状況で利上げは時期尚早と見ています。

 ただ、利上げから一週間あまりが経過した今どちらが優勢かを見ると、これは明らかに「強気派が優勢」です。

 まず豪ドルは急騰といってよい状況です。対米ドルレートは利上げ実施後上昇が加速、昨年夏につけた最高値に迫る勢いです。これは一時最高値から4割近く下がっていたことを思うと本当に驚くべき回復ですが、さらに強気な人がどんどん増えているような感じです。

 また、豪ドルのみならず、株式市場も世界的に上昇、このところ弱含んでいた英ポンドも急回復、新興国市場も一段高ですし、先進国の国債は軒並み売られています。これは間違いなく、今回の豪州の利上げが強気派に「買う理由」を与えたということだと思います。

円も全面安に
 円相場も全面安になっています。流れとしては「豪州利上げによる世界経済回復確認」→「リスク資産への投資増」→「為替市場ではキャリー・トレード拡大」→「円安」という極めて分かりやすい動きです。

 この流れが続いていると言うことは、円は依然として「リスク回避」の道具として使われているということを示しています。市場のムードが「強気化」しリスク資産への投資が増えるときには、円は米ドルや先進国の国債とともに売られ円安となり、逆に「弱気化」するときには円高となるという構造に変化はないと言うことです。

本当に強気でよいのか?
 では、もうこれで世界経済の回復への道筋は立ったので、「リスク資産買い」、「円安」が続くと見て良いのかというと、筆者はまったくそう思っていません。あいもかわらず「弱気」です。

 まず、今回の豪州の利上げが「世界の中央銀行の利上げサイクルの開始の合図」かというと、必ずしもそういうことではないと思います。豪州は「資源産出国」という特殊な位置におり、「中国経済の発展」の恩恵をもっとも濃く受けています。なおかつ、足元は中国の大規模な政策発動の恩恵も最も受けており、はっきりいって先進主要国の中では例外的に良好といっていい状況です。

 しかも豪州は世界経済の中でそれほど大きい存在ではありません。世界のGDPに占める割合を考えれば、米国、ユーロ圏それぞれが20~25%、日中がそれぞれ7%程度なのに対して、2%弱という小国です。「通貨の流通量」を考えてみても、米ドルやユーロはもとより、日本円と比べても非常に小さいです。そうしたことを考えれば、それほど今回の利上げが世界に影響を与えるかというと、そんなことは決してありません

 むしろ巨大経済圏である米、ユーロ圏、日本、英国の状況を考えると、金融システムは回復には程遠く、むしろ悪化が続いている状況です。市場が3月からずっと強気ですから、こうした「本当の悪いニュース」はあまり大きく報道されませんし、市場のプロも心にとどめながらも見ないようにしている感はありますが、経済を考える上では「金融システム」は非常に重大です。

 こうした状況で金融緩和の「出口」が語られ、実際に、豪州という小国ではあるものの、実行されたことを考えると、日本がITバブル崩壊直後に犯した「ゼロ金利解除」のような「政策ミス」となることも十分に考えられます
 安易に「もう円高も終わり」と考えるのは危険だと思います。

グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿
提供:有限会社イマジネーション


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