株価・投資信託検索

世界を震撼させた-南アフリカ・ランド事件

2009年11月05日

くりっく365で「大事件」
 南アフリカ・ランド相場が荒れています。FX(外国為替証拠金取引)のヘビー・ユーザーの方々等は既にご存知だと思いますが、東京金融取引所に上場されているくりっく365の「南アフリカ・ランド/円」でとんでもない値段がついたことが発端です

 10月30日(金)、というか日本時間では31日(土)未明の午前5時前に、南アフリカ・ランド円は11.5円近辺から8.5円近辺へと一瞬で約25%の大暴落となりました。詳しい経緯は筆者も伝聞でしか知らないのですが、どうも「南アフリカ・ランド/円(ZARJPY)」レートと「米ドル/南アフリカ・ランド(USDZAR)」レートを混同し、くりっく365ではZARJPYレートを取引するにもかかわらず、USDZARレートで指値を入れてしまい、それがヒットされてしまったことが原因のようです。

 このところZARJPYは11円台、ZARは7.5ランド近辺で動いていますが、上記のような勘違いから、例えばZARJPYを「7.5円でZARJPYを売る」という注文を出せば、買い手側からすれば「そんなに安くランドを売ってくれる人がいるのならば喜んで買う」ということになり、簡単に取引が成立します。勘違いした売り手は本来11.5円で売れるのにもかかわらず、7.5円でランドを売らなければならなくなりますので大損です。

 この売り手はおそらく「相場が1ドル=8.5ランドになったらUSDZARを売りたい」つまり、USDZARが8.5まで上がったら(南アフリカ・ランドが米ドルに対して現在の1ドル=7.5ランドから8.5ランドまで下がったら)USDZARを売りたいという意図で注文を出したものと推測されます。これでしたら「普通」の行動です。「今90円程度のドル/円相場が100円まで下がったら、ドルを売りたい」というのとよく似た行動です。

円が絡まない通貨ペアには十分注意を!!
 いったいどうしてこんな間違いが起きたかどうかはとりあえずさておき、私たち投資家にとってのこの事件の教訓は、通貨を売り買いする時には「どの通貨を売って、どの通貨を買っているのか」を最大限意識しなければならないということです。

 これは「円」が絡むペアであれば、感覚的に分かるのであまり問題にはなりません。たとえは、米ドルは90円、ポンドは150円、ユーロは135円、豪ドルは80円というようにならんでいれば、このレートを「買う」時には「これらの通貨を買って、円を売る」というのは感覚的に分かります。

 しかしながらこうした円が絡むペアというのは為替のプロの世界では実は一般的ではありません。プロの世界では米ドル(USD)とのレートを使うのがスタンダードで、ユーロ/円といった米ドルが絡まないペアは「クロス」といって日本人以外にはあまりピンとこないものです。

 ところが日本人には逆にUSDとのレートの方がピンときません。しかも困ったことに、たとえばユーロ/米ドル(EUR/USD)、英ポンド/米ドル(GBP/USD)、豪ドル(AUD/USD)のように「そのレートで買う」といえば、「その通貨を買って米ドルを売る」ということになる通貨もあれば、加ドル(USD/CAD)、スイス・フラン(USD/CHF)、南アフリカ・ランド(USD/ZAR)のように、逆に「米ドルを買ってその通貨を売る」というペアもあるのです。

 どうしてこうなっているかには歴史的な経緯が色々とあるのですが、とにかくプロの世界のスタンダードでそう決まっていると思っておいた方が賢明です。重要なのは、FXで注文を出す時には「買い」といえば、「左側の通貨を買って、右側の通貨を売る」のだということをこれでもかというくらいに意識するということです。「USD/CADの買い」は「加ドル売り」ですが、「AUD/USDの買い」は「豪ドル買い」です。円が絡まないペアのレートには最大限の注意を払いましょう。

「くりっく365の大事件」は世界に波及…
 さて、事件の顛末に話を戻します。この「ミス(と推測されるもの)」により、くりっく365の10月2日のZARJPYの終値は約8.4円(その前日は11円台です)と、普通ではありえないレートになりました。これによって、一部の証券会社経由でZARJPYの買いポジションを保有していた人々は「強制ロスカット」され、通常ではありえない損失を被るなど被害が出ています。東京金融取引所の見解はサイトにリリースが出ている通り「その時点において、市場動向からマーケットメイカーが提示した市場レートであり、システム障害等によるものではありません」だそうですので、この人たちはかわいそうですが、どうも今のところ文句は言えないようです。

 しかも、この波紋は実はくりっく365の中だけで完結せず、世界中に広がりました。金融の世界には「店頭デリバティブズ」という金融機関同士、ヘッジ・ファンド、あるいは一般の企業が極めて一般的に利用する市場があり、その規模はくりっく365のような「取引所」を使う取引よりも圧倒的に大きくなっています。今回の事件はここに影響を与え、多くの「通貨オプション」が今回の一件で被害を受けています。

 通貨オプションというのは基礎知識のない方には少々複雑ですが、要するに「定められた期日までに、定められた為替相場がある一定の水準以上になると、取引の一方が得をし、一方が損をする」という契約です。日本では「為替相場が満期までにいくら以上にならなければ高金利、それ以上になったら低金利」のような預金がたくさんありますが、それらはこのオプションを組み込んだものです。

 今回の事件では、普通であればありえないレートが実際に日本の取引所でついたことから、普通であれば損も得もしないはずのオプションが、突然の大儲けや大損をもたらしています。多くの人にとっては寝耳に水で、翌月曜日はプロの市場がこれらの損失や利益にかかる処理で大荒れになりましたし、筆者が働くロンドンのシティでは(少なくとも筆者の周囲では)普段は南アフリカ・ランドに直接携わってないプロの間でも話題になりました。

 しかし...今回の一件が単なる「個人投資家のミス」なのか、こうした通貨オプション市場の混乱を狙った「プロの仕掛け」なのかは、分かりません。筆者の個人的な感覚、あるいは筆者の周りのプロの意見は、やはりなんらかの調査が必要なのではないかというところですが...とにかく「通貨を売買する時には何を買って、何を売っているのか、これでもかというくらい意識しなければならない」ということを他山の石にしましょう。

グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿
提供:有限会社イマジネーション


    コラム評価
    このコラムは参考になりましたか?
    参考にならなかった12345678910参考になった

    おすすめ情報

    注目情報注目情報

    PR

    住宅・不動産情報

    ローコスト住宅はなぜ安い?ローコスト住宅はなぜ安い?

    「安かろう、悪かろう」は昔話?ローコスト住宅実現のコツ

    為替ニュース(動画)

    MoneyInlineVideoPlayer_MktsumPage
    This video requires the Adobe® Flash® Player. Download a free version of the player.

    PR

    本サイトにおけるいかなる情報も保証されるものではありません。本サイトの情報に基づいて被った損害に対して、弊社および情報提供元は一切の責任を負いません。株価データは東京証券取引所、大阪証券取引所、ジャスダック証券取引所、野村総合研究所から情報提供を受けています。日経平均株価の著作権は、日本経済新聞社に帰属します。データは最低20分遅れ、またはそれより古いことがあります。