円高は日本株にとってマイナスでなくプラス?
2007年12月26日2007年を振り返る
2007年を振り返ってみますと、サブプライムローン問題などにより日本の株式は大きく下落しました。また、ここ数年の円安基調が円高基調に変化している兆候も、年の後半には見られました。
2007年の夏ごろまでの数年間、為替相場は円安基調で推移していました。しかし、6月につけた1ドル=124円の円安水準を境に円高基調となり、11月には1ドル=107円台にまで円高が進行しました。
円安基調であった為替相場が円高基調に変化するとよく言われるのが、輸出企業(以下、売上の多くが海外への輸出売上である企業を「輸出企業」と呼ぶこととします)の採算悪化による景気減速懸念です。そのため、最近の円高局面では、急激な円高は日本経済にとってマイナスであるとして、悲観的な考え方が多いように思えます。
日本にとって円高はマイナス?
確かに、ここ何年かの日本の景気回復は、アジアをはじめとした世界的な好景気に支えられていたのは事実です。それに円安という要因が加わり、特に輸出型業の多くは、好調な業績をあげることができました。
輸出企業にとっては、円安になれば、輸出による売上代金を円に換算した結果、より多くの売上を得られることになりますから、当然、利益を増やす要因になります。実際に、トヨタをはじめとした自動車業界では、円安による為替差益の発生が、利益増額の一因になっていました。
逆に、円高になれば、為替差損の発生などにより、利益の額が減少する事態になりかねません。そのため、特に輸出企業の業績悪化の懸念から、2007年夏以降は、「円高=日本株安」という図式が成り立っているといえます。
では、円高は私たちにとって本当にマイナスなのかといえば、決してそんなことはないのです。
何も日本は海外に輸出ばかりしているのではありません。食料、資源、原材料をはじめ、海外からの輸入も非常に多額にのぼります。
例えば、最高値を更新中のガソリンであっても、円高になれば仕入れ値が下がりますから、販売価格の上昇に歯止めがかかることが期待できます。また、食品の原材料価格も円高になれば下がります。つまり、「消費者」の視点からみれば、商品価格の上げ止まりや値下がりという効果が期待できるのです。
「円高=悪影響」なのは、言うなれば輸出企業の側に立った場合の考え方です。消費者の立場に立てば、価格上昇の抑制や価格下落につながる円高はむしろ歓迎すべきなのです。
個人投資家にとって円高の影響は?
さて、個人投資家の立場で、円高基調のなか日本株に投資する場合は、どのように考えたらよいでしょうか。
まずは、「円高が業績に悪影響である企業」、「円高が業績に影響を与えない企業」、「円高が業績にプラスである企業」に分類することから始めましょう。
お気づきの方もいるかも知れませんが、2007年秋ごろから、円高が業績に悪影響である企業と、そうでない企業の株価の動きに違いが見られつつあります。
本稿執筆時点で、日経平均株価およびTOPIXの、2007年における年初来安値はいずれも11月22日につけています。ところが、個別銘柄に目を向けると、11月22日よりかなり前に安値をつけ、その後順調に上昇を続けている銘柄も結構多いことに気付きます。
つまり、「円高=株安」の図式における「株安」は、日経平均株価やTOPIXといった、東証1部の株式市場全体を表した指数での話であり、指数より先に株価が底打ちしていると思われる個別銘柄が、実際に数多く出ているのです。
例えば、東証マザーズなどの新興市場では、すでに大きく上昇を始めている銘柄も多くあります。東証1部の銘柄にも、同様に、底打ちから反転上昇していると見られるものがいくつも現れています。東証マザーズに上場する銘柄の値動きを示した東証マザーズ指数は、9月下旬からの約1ヶ月で50%以上も上昇したのです。
新興市場の銘柄の多くは、日本国内を中心に事業展開しています。つまり、円高になっても業績に影響が及ばない「内需株」ということができます。
確かに、内需株であっても、まだ株価が底値近辺にとどまっているものも多くあります。しかし、「内需株の集まり」である新興市場の銘柄に、株価が大きく上昇しているものがいくつも出てきている、という事実を重要視すべきです。
こうした最近の個別銘柄の動きから判断すると、新興市場銘柄をはじめとして、ここ1~2年の間株価が下落し続けていたような、「内需株」に分類される銘柄が買われ始めていることが分かります。
つまり、今後は日本の株式市場の主役が、鉄鋼、海運、商社などといった、今までの主役銘柄から「内需株」に交代する可能性も出てきているのです。
円高≠株安
また、「円高=株安」という図式が当てはまらないことは、過去の株価の動きを見ても明らかです。例えば、1998年8月に1ドル=147円台まで円安になった後、1999年11月には1ドル=101円台にまで急速に円高が進みました。ところが、この間の日経平均株価やTOPIXは、大きく上昇したのです。
1999年といえば、ITバブル真っ只中でした。このときに大きく上昇したIT関連銘柄は、いわば円高の影響を受けない「内需株」でした。今後さらに円高になったときに同じようにIT関連銘柄が大きく上昇するかどうかは分かりませんが、円高の影響を受けない、あるいは円高がプラスに作用する企業をピックアップしておくことをお勧めします。
もちろんこれから為替相場がさらなる円高に進むのか、あるいは再び円安に戻るのかを完全に予測することはできません。しかし、仮に今後さらなる円高になったときのことを考えて、今から準備をしておくことは決して無駄にはならないはずです。
日本株は、2006年、2007年と下げ続けた銘柄が非常に多くありました。個人的にはかなり割安な水準にまで下落した銘柄も多いように感じます。
もし、日本株の割安さに外国人投資家が気付き、日本株を買ってきたならば、円買い需要が高まり、為替相場は円高に振れるでしょう。そして、為替相場が円高になれば、日本株を買っている外国人投資家にとっては為替差益が期待できます。
つまり、円高は、日本株に投資する外国人投資家にとっては、為替差益の面からもプラスに働くのです。
「外国人投資家の日本株買い」→「円高」→「さらなる外国人投資家の日本株買い」→「さらなる円高」、というように、円高が日本の株式市場にとってプラスになるような連鎖反応を、2008年はぜひ期待したいものです。
(文章中の、今後の株式市場や為替相場等に関する予測はあくまでも個人的見解であり、その結果に責任は負いません。実際に投資判断をされる際は、自己責任のもとで行っていただきますようお願いします。)
2007年を振り返ってみますと、サブプライムローン問題などにより日本の株式は大きく下落しました。また、ここ数年の円安基調が円高基調に変化している兆候も、年の後半には見られました。
2007年の夏ごろまでの数年間、為替相場は円安基調で推移していました。しかし、6月につけた1ドル=124円の円安水準を境に円高基調となり、11月には1ドル=107円台にまで円高が進行しました。
円安基調であった為替相場が円高基調に変化するとよく言われるのが、輸出企業(以下、売上の多くが海外への輸出売上である企業を「輸出企業」と呼ぶこととします)の採算悪化による景気減速懸念です。そのため、最近の円高局面では、急激な円高は日本経済にとってマイナスであるとして、悲観的な考え方が多いように思えます。
日本にとって円高はマイナス?
確かに、ここ何年かの日本の景気回復は、アジアをはじめとした世界的な好景気に支えられていたのは事実です。それに円安という要因が加わり、特に輸出型業の多くは、好調な業績をあげることができました。
輸出企業にとっては、円安になれば、輸出による売上代金を円に換算した結果、より多くの売上を得られることになりますから、当然、利益を増やす要因になります。実際に、トヨタをはじめとした自動車業界では、円安による為替差益の発生が、利益増額の一因になっていました。
逆に、円高になれば、為替差損の発生などにより、利益の額が減少する事態になりかねません。そのため、特に輸出企業の業績悪化の懸念から、2007年夏以降は、「円高=日本株安」という図式が成り立っているといえます。
では、円高は私たちにとって本当にマイナスなのかといえば、決してそんなことはないのです。
何も日本は海外に輸出ばかりしているのではありません。食料、資源、原材料をはじめ、海外からの輸入も非常に多額にのぼります。
例えば、最高値を更新中のガソリンであっても、円高になれば仕入れ値が下がりますから、販売価格の上昇に歯止めがかかることが期待できます。また、食品の原材料価格も円高になれば下がります。つまり、「消費者」の視点からみれば、商品価格の上げ止まりや値下がりという効果が期待できるのです。
「円高=悪影響」なのは、言うなれば輸出企業の側に立った場合の考え方です。消費者の立場に立てば、価格上昇の抑制や価格下落につながる円高はむしろ歓迎すべきなのです。
個人投資家にとって円高の影響は?
さて、個人投資家の立場で、円高基調のなか日本株に投資する場合は、どのように考えたらよいでしょうか。
まずは、「円高が業績に悪影響である企業」、「円高が業績に影響を与えない企業」、「円高が業績にプラスである企業」に分類することから始めましょう。
お気づきの方もいるかも知れませんが、2007年秋ごろから、円高が業績に悪影響である企業と、そうでない企業の株価の動きに違いが見られつつあります。
本稿執筆時点で、日経平均株価およびTOPIXの、2007年における年初来安値はいずれも11月22日につけています。ところが、個別銘柄に目を向けると、11月22日よりかなり前に安値をつけ、その後順調に上昇を続けている銘柄も結構多いことに気付きます。
つまり、「円高=株安」の図式における「株安」は、日経平均株価やTOPIXといった、東証1部の株式市場全体を表した指数での話であり、指数より先に株価が底打ちしていると思われる個別銘柄が、実際に数多く出ているのです。
例えば、東証マザーズなどの新興市場では、すでに大きく上昇を始めている銘柄も多くあります。東証1部の銘柄にも、同様に、底打ちから反転上昇していると見られるものがいくつも現れています。東証マザーズに上場する銘柄の値動きを示した東証マザーズ指数は、9月下旬からの約1ヶ月で50%以上も上昇したのです。
新興市場の銘柄の多くは、日本国内を中心に事業展開しています。つまり、円高になっても業績に影響が及ばない「内需株」ということができます。
確かに、内需株であっても、まだ株価が底値近辺にとどまっているものも多くあります。しかし、「内需株の集まり」である新興市場の銘柄に、株価が大きく上昇しているものがいくつも出てきている、という事実を重要視すべきです。
こうした最近の個別銘柄の動きから判断すると、新興市場銘柄をはじめとして、ここ1~2年の間株価が下落し続けていたような、「内需株」に分類される銘柄が買われ始めていることが分かります。
つまり、今後は日本の株式市場の主役が、鉄鋼、海運、商社などといった、今までの主役銘柄から「内需株」に交代する可能性も出てきているのです。
円高≠株安
また、「円高=株安」という図式が当てはまらないことは、過去の株価の動きを見ても明らかです。例えば、1998年8月に1ドル=147円台まで円安になった後、1999年11月には1ドル=101円台にまで急速に円高が進みました。ところが、この間の日経平均株価やTOPIXは、大きく上昇したのです。
1999年といえば、ITバブル真っ只中でした。このときに大きく上昇したIT関連銘柄は、いわば円高の影響を受けない「内需株」でした。今後さらに円高になったときに同じようにIT関連銘柄が大きく上昇するかどうかは分かりませんが、円高の影響を受けない、あるいは円高がプラスに作用する企業をピックアップしておくことをお勧めします。
もちろんこれから為替相場がさらなる円高に進むのか、あるいは再び円安に戻るのかを完全に予測することはできません。しかし、仮に今後さらなる円高になったときのことを考えて、今から準備をしておくことは決して無駄にはならないはずです。
日本株は、2006年、2007年と下げ続けた銘柄が非常に多くありました。個人的にはかなり割安な水準にまで下落した銘柄も多いように感じます。
もし、日本株の割安さに外国人投資家が気付き、日本株を買ってきたならば、円買い需要が高まり、為替相場は円高に振れるでしょう。そして、為替相場が円高になれば、日本株を買っている外国人投資家にとっては為替差益が期待できます。
つまり、円高は、日本株に投資する外国人投資家にとっては、為替差益の面からもプラスに働くのです。
「外国人投資家の日本株買い」→「円高」→「さらなる外国人投資家の日本株買い」→「さらなる円高」、というように、円高が日本の株式市場にとってプラスになるような連鎖反応を、2008年はぜひ期待したいものです。
(文章中の、今後の株式市場や為替相場等に関する予測はあくまでも個人的見解であり、その結果に責任は負いません。実際に投資判断をされる際は、自己責任のもとで行っていただきますようお願いします。)
公認会計士・税理士・AFP 足立武志
提供:株式会社FP総研
おすすめ情報
最新コラム
|
人気ランキング
| コラムタイトル | 平均スコア | |||
| 1. | 「オバマ演説」の衝撃 - 1月26日 | 7.73 | ||
| 2. | 中国の引き締め転換、ギリシャ問題、ボルカー・プラン - 1月29日 | 7.51 | ||
| 3. | 香港ハンセン指数はピークから15%安まで下落 - 2月9日 | 7.40 | ||
| 4. | 大統領選を控えたウクライナ信用不安問題の火薬庫 - 1月26日 | 7.27 | ||
| 5. | 死亡保険金の受取人を誰にするか - 1月19日 | 7.17 |
PR
最新コラム
- いいのか!?障害者自立支援法廃止 - 2月10日
- 香港ハンセン指数はピークから15%安まで下落 - 2月9日
- イカルウィットG7 - 2月9日
- 日米金利差は為替レートに影響するのか? - 2月8日
- FXと確定申告 - 2月5日

