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企業の信用リスクがわかる「CDS」って何?

2008年12月02日

 リーマン・ブラザーズの破たん以降よく耳にする「CDS」。実は日本企業を対象にしたCDSも多く取引されていること、ご存知ですか?

「CDS」って何?
 「CDS」という言葉、最近皆さんもよく耳にするのではないでしょうか。これは「クレジット・デフォルト・スワップ」の略称であり、一言でいえば「投資先・融資先の破たんによる損失に備えるための保険」です。

 例を挙げてもう少し詳しく説明しましょう。
 X社が発行した社債に投資した投資家Aは、X社が破たんして社債の元本や利息が支払われないリスク(「債務不履行リスク」や「デフォルトリスク」と呼びます)を回避したいと考えました。
 そこで投資家Aは、保険会社Bとの間で以下のような取引をすることにしました。保険会社Bは、X社が万が一破たんしてもX社から支払われなかった社債の元本や利息の支払を肩代わりしてあげます。その代わりに、投資家Aは保険会社Bに保証料を支払います。この投資家Aと保険会社Bとの間の取引をCDS取引と呼びます。なお、CDS取引では保証料のことを「プレミアム」と呼びます。この取引によって、AはX社の債務不履行リスクを回避できますし、保険会社BもX社が破たんしなければ、投資家Aから受け取った保証料が利益になります。

 上の例のように、もともとは、ある会社の社債や債権を有する投資家や金融機関などが、債務者の債務不履行リスクに備えることがCDSの本来の役割でした。
 しかしながら、近年では、単純に投機目的でCDS取引が活発に行われるようになり、CDSの取引残高はピーク時には60兆ドルを超えるまでに膨張しました。
 そうした中、アメリカの大手証券会社であるベア・スターンズの実質的な破たん、そしてリーマン・ブラザーズの破たんにより、CDS取引の対象となった企業の破たんが今後次々と起きれば、CDSの売り手は膨大な額の支払いを余儀なくされるということが一気に表面化したのです。
 今回の金融危機でCDSが「時限爆弾」とも呼ばれているのはこのためで、アメリカの大手保険会社AIGが破たん処理ではなく国の公的管理となったのは、AIGがCDSの大きな売り手であったために、破たん処理とした場合の影響があまりにも大きすぎるからといわれています。

日本企業の「CDS」は?
 このように、今回の金融危機の主犯格ともされるCDSですが、日本の上場企業を対象としたCDSも多く取引されていることはご存知でしょうか?
 東京金融取引所のホームページに、上場企業のCDSスプレッドと、過去の推移を示したチャートが掲載されています。
 CDSスプレッドとは、CDSのプレミアム(=保証料)の料率のことを表します。このスプレッドが高い企業ほど、投資家から破たんの危険性が高いとみられていることになります。

 これを見ると、以下の2つの点を読み取ることができます。
(1)10月の株価急落局面に向けて、どの企業のCDSスプレッドも上昇した
(2)財務体質が相対的に弱い企業のCDSスプレッドは、財務体質が強固な企業に比べてかなり高い数値になっている

 このことから、10月の株価急落の局面では、全体的に信用リスク(企業が借りたお金を返済できなくなり、破たんに至るリスク)が非常に高まったということが分かります。
 信用リスクが高まると、借入金が多額であったり、借入返済のためのキャッシュ・フローを安定して獲得できない恐れがあるような、財務体質の弱い企業に対しては、破たんが強く意識されることになります。そのため、企業によってはCDSスプレッドが1,000bpsを超えるような数値にまで急上昇したのです。
 「bps」は「Basis Point Spread」の略で、1bpsは0.01%を表します。1,000bpsは10%と同じです。CDSスプレッドが200bps(=2%)を超えると要注意、と言われていますから、10%を超えるような保証料が必要なほどの企業は、破たんのリスクがかなり高いとみられていることになります。
 あるヘッジファンドでは、上場企業ごとのCDSスプレッドの推移をみて、株式を売買しているようです。例えば、ある企業のCDSスプレッドが上昇傾向にあると判断したらその企業の株式を空売りするという具合です。
 実際に、10月の株価急落の際、このCDSスプレッドが高い企業ほど、株価が大きく売り込まれました。

 一方、10月終わりから11月はじめにかけ、株価は反発しましたが、CDSスプレッドをみると全体的に若干下がってきていることが分かります。株価が下がると信用リスクが上昇することが多いですから、信用リスクの高低をも意味するCDSスプレッドと株価との間はある程度の負の相関関係があると考えられます。

「CDSスプレッド」を投資戦略の1つに!
 CDSスプレッドが上昇局面にあるようなときは、信用リスクに投資家が非常に敏感になっている時期ですから、特に財務体質が脆弱である企業の株式への投資は、特に慎重になる必要があります。たとえ破たんしなくとも、破たんのリスクを嫌気して、株価が大きく下落する可能性が高いからです。
 一方、信用リスクが低下するような局面では、業績自体が好調であれば、財務体質が脆弱な企業の株価は大きく上昇することもよくあります。
 つまり、財務体質が脆弱な企業は、信用リスクの高低によって株価が大きく動く「ハイリスク・ハイリターン型」の投資対象であるといえます。

 各企業ごとのCDSスプレッドの高低をみることで、財務体質が優良である企業、言い換えれば破たんのリスクが低い企業を探しだすことができます。また、ある企業のCDSスプレッドの推移をみれば、その企業の信用リスクの状況も分かります。
 例えば、ある時点から急激にCDSスプレッドが上昇しているような企業は、急速な資金繰りの悪化や、多額の損失発生などといった信用リスクが高まった何らかの原因が生じているはずです。
 さらに、CDSスプレッドが全体的に上昇局面にあれば、株式市場でも信用リスクが高く意識されている、といったように、CDSスプレッド全体の動きから、現在の株式市場は信用リスクに敏感になっているのかどうかを推測することも可能です。

 各企業のCDSスプレッドの高低やCDSスプレッドの推移を、銘柄選びや売買タイミングを図る際の一助とすることも、これからの投資戦略の1つといえるでしょう。
 CDSスプレッドの数値やその推移を参考にして、ご自身の投資スタンスにより、財務体質の強固な企業へ手堅く投資するか、財務体質の脆弱な企業へハイリスク覚悟でハイリターンを狙って投資するかを判断することも1つの投資手法です。

公認会計士・税理士・AFP 足立武志
提供:株式会社FP総研


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