グローバルは「投資から貯蓄へ」と変化?
2009年01月14日株式市場は一進一退
2008年は本当にとんでもない年でした。巨大金融機関の破綻、相次ぐ政府による金融機関救済、株式市場の暴落、金利の急低下、円の急騰、そして世界経済の急速な悪化・・・、すべてが「かつてないほどの」という形容詞がまったく大げさでないほどの物凄さで過ぎていった感じがします。
そんな中で、金融市場はようやく急激な動きが止まり、やっと一進一退のフェーズに入ってきたように感じられます。これは、各国当局の対策がやっと効果を発揮し始め、一方向にパニック的に動いてきた金融市場が、本来あるべき居心地を見つけようとしている、そんな動きだと思われます。
歴史的な構造変化が進行中、「働かずにお金を儲けようという文化の崩壊」
しかしながら、何がここまでの急激な変化をもたらしたのでしょう。今後の金融市場や経済の動きを占う上で、この点をしっかり抑えておかなければなりません。
結論から言えば、「働かずにお金を儲けようという文化の崩壊」です。というとあまりにも分かりやすいため、「経済や金融市場というのはもっと複雑な要因で動いているのではないのか?」という疑問をよく筆者も投げかけられますが、大きな動きほどその理由は実は単純です。
もちろん細かく分解しようと思えば、いくつもの事象が重なって今回のような事態が起きたと説明することは可能です。たとえば、アメリカの不動産バブルが崩壊し、サブ・プライム・ローンの焦げ付きが急増し、そのローンを証券化した商品の価値が暴落し、それにより金融機関の損失がかさみ、信用不安が起き、貸し渋りがおき、景気が悪化し、人々がリスクをとらなくなり、株式市場が暴落し、円高になり、景気はさらに悪化し、それがさらに株式市場の下げ要因となり・・・という具合です。こう分解した方がいかにも物事をわかっているかのように見えます。
ただ、これは長い目で見ればすべて一つの原因につながっています。それが「働かずしてお金を儲けようという文化」が生み出した「バブル」です。
「投機文化の進化」と「レバレッジ」によるバブルの大膨張
まず、米国で不動産バブルが発生したのはなぜでしょう?当たり前ですが、すべてのバブルは「働かずにお金を儲けよう」という発想から生まれます。日本の80年代後半のバブルも「財テク」という「本業ではなく、金融取引でお金を儲ける」というキーワードに行き着きます。
このバブルの膨張に拍車をかけるのが「貸し出し」です。日本のバブル期は銀行が不動産投資をしようとする企業に貸し込みました。これにより企業は本来本業で儲けた結果残っている手元の資金でしかできないはずの投資を、もっともっと大規模に行うことができるようになったというわけです。いわゆる「レバレッジがかかった状態」です。今回の米国の不動産バブルも同じです。普通であればお金を借りることなどできないような人にもほとんど審査もなしにお金を貸し込むような金融機関が乱立し、どんどん投機を煽っていったのです。
日本と米国で異なるのは、日本の場合は金儲けの主役は「企業」であったのに対し、米国の場合は「個人」をより深く巻き込んでいたことです。日本のバブル当時は、一般の人々もどんどん値段の上がる商業地の状況に色めき、値段が上がる前に自分の家を買おうとする人は増えましたが、家をたくさん買ってそれを転売して儲けようという人はそれほど多くはありませんでした。
しかしながら米国や英国の状況は、普通の個人が「財テク」を当たり前にするというところまで「進化」していました。ノン・リコース・ローンが普及し、その人の年収や財務状況に関係なく、不動産の担保さえあれば、年収が数百万円の普通の人でもお金が1億円くらい借りられるという状況でした。こういう状況になったのは、お金を貸す当の金融機関が、米国の場合は「投資銀行」や「ヘッジファンド」という形でさらに一段と「進化」しており、その従業員が一昔前では考えられないような何十億円単位の年収を手にするようになるまでになっていたためです。
つまり米国の場合は「働かずにお金を儲ける文化」が、個人でも儲ける人は十億円単位、普通の人でも数千万円単位で稼げるという状況までバブルが膨らんでいたということです。そしてそのバブルが弾け、下げが下げを呼んだのが2007年以降の動きということになります。
バブル崩壊による「投資から貯蓄へ」の流れが始まる?
このバブルは完全に崩壊しました。米国の投資銀行はすべて商業銀行への転換を迫られ、中央銀行の監視下に置かれることになりましたし、ヘッジ・ファンドもこれまでのように容易に銀行借入を行いレバレッジをあげることはできなくなりました。個人の投機目的のローン借り入れ等も、もってのほかという状況です。銀行は投機目的の資金を人に貸すような余裕はありません。
ただ、まだまだバブルの真っ最中に貸し込まれたお金は、返済されずに残っています。このお金の借り手は、一部は返済できずに倒産したり債権放棄を受けたりして焦げ付きとなって処理されますが、大半は今後時間をかけて返済されます。これまでのように、物件の値段が上がったらそれを売って借金を返して「ああ儲かった」などという悠長なことはもはやできません。売るに売れない物件を抱えながらコツコツとお金を返さねばなりません。金融機関も差し押さえた物件を抱え、誰かがお金を貯めてその物件を買ってくれるのをじっと待つしかできません。
日本ではここ数年、「貯蓄から投資へ」をキーワードに、株式、投資信託、FX等のリスク商品を積極的に奨励する雰囲気が強まっていました。しかしながら、世界はここにきてまったく逆の流れに動きつつあります。これまで成長してきた「レバレッジを使った投資」は影を潜め、より真面目に働いてコツコツ借金を返したり、お金を貯めたりといった「文化」が求められています。
そう考えれば、世界の株式市場は日本の「失われた10年」同様の「長期低迷相場」に入った可能性も捨てきれない、そんな状況だと筆者は考えています。「株は上がったら売り」がひょっとしたら正解なのかもしれません。
2008年は本当にとんでもない年でした。巨大金融機関の破綻、相次ぐ政府による金融機関救済、株式市場の暴落、金利の急低下、円の急騰、そして世界経済の急速な悪化・・・、すべてが「かつてないほどの」という形容詞がまったく大げさでないほどの物凄さで過ぎていった感じがします。
そんな中で、金融市場はようやく急激な動きが止まり、やっと一進一退のフェーズに入ってきたように感じられます。これは、各国当局の対策がやっと効果を発揮し始め、一方向にパニック的に動いてきた金融市場が、本来あるべき居心地を見つけようとしている、そんな動きだと思われます。
歴史的な構造変化が進行中、「働かずにお金を儲けようという文化の崩壊」
しかしながら、何がここまでの急激な変化をもたらしたのでしょう。今後の金融市場や経済の動きを占う上で、この点をしっかり抑えておかなければなりません。
結論から言えば、「働かずにお金を儲けようという文化の崩壊」です。というとあまりにも分かりやすいため、「経済や金融市場というのはもっと複雑な要因で動いているのではないのか?」という疑問をよく筆者も投げかけられますが、大きな動きほどその理由は実は単純です。
もちろん細かく分解しようと思えば、いくつもの事象が重なって今回のような事態が起きたと説明することは可能です。たとえば、アメリカの不動産バブルが崩壊し、サブ・プライム・ローンの焦げ付きが急増し、そのローンを証券化した商品の価値が暴落し、それにより金融機関の損失がかさみ、信用不安が起き、貸し渋りがおき、景気が悪化し、人々がリスクをとらなくなり、株式市場が暴落し、円高になり、景気はさらに悪化し、それがさらに株式市場の下げ要因となり・・・という具合です。こう分解した方がいかにも物事をわかっているかのように見えます。
ただ、これは長い目で見ればすべて一つの原因につながっています。それが「働かずしてお金を儲けようという文化」が生み出した「バブル」です。
「投機文化の進化」と「レバレッジ」によるバブルの大膨張
まず、米国で不動産バブルが発生したのはなぜでしょう?当たり前ですが、すべてのバブルは「働かずにお金を儲けよう」という発想から生まれます。日本の80年代後半のバブルも「財テク」という「本業ではなく、金融取引でお金を儲ける」というキーワードに行き着きます。
このバブルの膨張に拍車をかけるのが「貸し出し」です。日本のバブル期は銀行が不動産投資をしようとする企業に貸し込みました。これにより企業は本来本業で儲けた結果残っている手元の資金でしかできないはずの投資を、もっともっと大規模に行うことができるようになったというわけです。いわゆる「レバレッジがかかった状態」です。今回の米国の不動産バブルも同じです。普通であればお金を借りることなどできないような人にもほとんど審査もなしにお金を貸し込むような金融機関が乱立し、どんどん投機を煽っていったのです。
日本と米国で異なるのは、日本の場合は金儲けの主役は「企業」であったのに対し、米国の場合は「個人」をより深く巻き込んでいたことです。日本のバブル当時は、一般の人々もどんどん値段の上がる商業地の状況に色めき、値段が上がる前に自分の家を買おうとする人は増えましたが、家をたくさん買ってそれを転売して儲けようという人はそれほど多くはありませんでした。
しかしながら米国や英国の状況は、普通の個人が「財テク」を当たり前にするというところまで「進化」していました。ノン・リコース・ローンが普及し、その人の年収や財務状況に関係なく、不動産の担保さえあれば、年収が数百万円の普通の人でもお金が1億円くらい借りられるという状況でした。こういう状況になったのは、お金を貸す当の金融機関が、米国の場合は「投資銀行」や「ヘッジファンド」という形でさらに一段と「進化」しており、その従業員が一昔前では考えられないような何十億円単位の年収を手にするようになるまでになっていたためです。
つまり米国の場合は「働かずにお金を儲ける文化」が、個人でも儲ける人は十億円単位、普通の人でも数千万円単位で稼げるという状況までバブルが膨らんでいたということです。そしてそのバブルが弾け、下げが下げを呼んだのが2007年以降の動きということになります。
バブル崩壊による「投資から貯蓄へ」の流れが始まる?
このバブルは完全に崩壊しました。米国の投資銀行はすべて商業銀行への転換を迫られ、中央銀行の監視下に置かれることになりましたし、ヘッジ・ファンドもこれまでのように容易に銀行借入を行いレバレッジをあげることはできなくなりました。個人の投機目的のローン借り入れ等も、もってのほかという状況です。銀行は投機目的の資金を人に貸すような余裕はありません。
ただ、まだまだバブルの真っ最中に貸し込まれたお金は、返済されずに残っています。このお金の借り手は、一部は返済できずに倒産したり債権放棄を受けたりして焦げ付きとなって処理されますが、大半は今後時間をかけて返済されます。これまでのように、物件の値段が上がったらそれを売って借金を返して「ああ儲かった」などという悠長なことはもはやできません。売るに売れない物件を抱えながらコツコツとお金を返さねばなりません。金融機関も差し押さえた物件を抱え、誰かがお金を貯めてその物件を買ってくれるのをじっと待つしかできません。
日本ではここ数年、「貯蓄から投資へ」をキーワードに、株式、投資信託、FX等のリスク商品を積極的に奨励する雰囲気が強まっていました。しかしながら、世界はここにきてまったく逆の流れに動きつつあります。これまで成長してきた「レバレッジを使った投資」は影を潜め、より真面目に働いてコツコツ借金を返したり、お金を貯めたりといった「文化」が求められています。
そう考えれば、世界の株式市場は日本の「失われた10年」同様の「長期低迷相場」に入った可能性も捨てきれない、そんな状況だと筆者は考えています。「株は上がったら売り」がひょっとしたら正解なのかもしれません。
グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿
提供:株式会社FP総研
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