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今年の決算を読み解く「割引現在価値」って何

2009年01月27日

「割引現在価値」と言う言葉を聞いた事がありますか?
将来得られるであろうお金を、利息を加味して、今の価値に置き換えたものです。というと、何がなんだかわからない方も、「複利」と聞けばピンとくるかと思います。
割引現在価値とは、福澤諭吉もその効用を説いたという複利と表裏一体の関係になりますので、まずは複利のお話からしていくことにしましょう。

複利は、どんな投資をするにも必ず必要となってくる考え方で、この考え方がわからなければ投資はやめておいたほうが良い、と言っても過言ではありません。とても重要な考え方ですので簡単にまとめておきましょう。

複利とは「我慢した雪ダルマ」
よく「借金が雪ダルマのように膨らんで・・・」という表現を聞いたことがあるかと思います。雪ダルマは、もともとの雪の塊に少しずつ雪がくっついていくことで、大きくなればなるほど、くっつく雪も増えていきます。
借金も同じで、利息を支払わないと利息にさらに利息がついて、どんどん借金が増えていくのです。

投資も同じです。
例えば、我慢のできるAさんと我慢のできないBさんが10%で1,000円を運用したとしましょう。1年のあいだ1,000円を10%で運用することで、年100円の利息をもらうことができます。そこで我慢のできないBさんは、100円をおろして使ってしまいますが、Aさんはそこを我慢して、その100円をさらに投資にまわすのです。これが複利での運用です。Aさんは我慢の甲斐あって、翌年は1,100円が元本になりますので、利息は110円(1,100円×10%)となり、1,100円+110円の1,210円が手元に残りますが、我慢せずに利息をもらってしまったBさんは、元手は1,000円のまま(単利で運用)ですので、翌年も100円の利息しかもらえません。
長期投資が効率的だと言う理論の根拠はこの複利です。

割引現在価値とは?
では、「割引現在価値」とはなんでしょう?
1,000円を10%で2年間複利で運用すると、1年後には1,000円+100円で1,100円となり、2年後には1,110円+110円で、1,210円となるのは、上記で見たとおりです。
これを逆に考えたのが割引現在価値という考え方で「2年後に1,210円になる資産の現在の価値も1,000円ですよ」というのが、割引現在価値です。将来1,210円の価値になるものも、今は1,000円の価値しかないのです。

企業の新規事業や設備投資
例えば、企業が新規事業を始めるとき、設備投資などをするとき、大きなお金を使って長い期間を見込んで投資をしていきます。そのときに、経営幹部はどのような考え方で投資の有無を決めているのでしょうか?どの会社もこの割引現在価値で考えています。例えば、この新規事業が年に100万円ずつの利益を生み出すとするならば、利回りが10%だとしたら、それは1,000万の価値のある事業というわけです。その事業が1,000万円以下で投資できるのであればGOですし、1,000万円以上かかるのであればNOなのです。

企業の配当方針
また、会社が事業を行っていくにあたって、市場(マーケット、業界)が成長しているときと、そうでないときで配当政策が変わってきます。

市場が成長しているときには、得られた利益はさらに次の投資に向けたほうが、複利の効果で、さらに大きな利益を得ることができます。新規事業の割引現在価値が高い(たくさん収益を生み出せる)ので投資が促進されます(儲かりやすいということです)。
一方、市場が成熟・停滞しているのであれば、新規事業の割引現在価値が低い(あまり収益を生み出せない)ので、その新規事業には慎重にならざるを得ません。その場合には、得られた利益は配当として、株主に返した方が良いのです。

成長している業界でビジネスをしている企業は新規事業投資を、成熟業界の企業は配当を、そんなイメージをもたれると良いと思います。なんでもかんでも「配当が多ければ良い」というものでもありません。そもそも、株式投資は、配当をもらうことも一つの目標ですが、株価の上昇(キャピタルゲイン)ももう一つの大事な目標です。

もうちょっと脱線しましょう。「新規事業なんてリスキーだ」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、会社はある程度のシェアを持っていないと、効率のよい経営ができないのです。その市場でトップシェアをとるか、2番手になるかでも、とっていく戦略(マーケティング)がぜんぜん違いますし、3番手以降でもぜんぜん違うわけです。
逆に、投資をやめ配当に回し、新規事業・設備投資などを怠っている方が、リスクが高い場合も多くあります。

2009年3月期の決算予想~PBRを信じて良い?
今年の決算は、赤字の会社が多くでることが予想されます。赤字になると利益の金額を使っていくPERなどの株価の指標はあてになりません。では、PBRはどうでしょうか?資産の金額をもとに計算していくので、影響がなさそうに見えますが、設備投資や工場などの資産を多く持っているメーカーなどは、PBRにも注意が必要です。

通常決算書には、固定資産は買ったときの金額をベースに計算されていますが、会社の売り上げの見通しが悪くなってくると、その固定資産を割引現在価値まで減額させなければいけない場合があります。聞かれたことがある方も多いかもしれませんが、これを減損会計と呼びます。
その工場が生み出す利益が見通しよりも小さくなった場合には、その工場が古くなったわけでもないのに、特別に価値を減額させるのです。その計算をするときに、将来手に入れることができるお金を見積もって、その割引現在価値を算定し、固定資産の評価に結びつけるのです。したがって、「PBRが1倍を切った!」などといって、すぐに買ってしまっても、あとでその企業の持っている固定資産が減損されてたいした価値がなくなってしまう可能性が、今年の決算については十二分にあるのです。

まとめ~4つのポイント
・割引現在価値は、複利にも通じるとても大事な考え方で、会社の新規事業・設備投資の可否などにも使われている考え方であること。
・企業の固定資産は、この割引現在価値で評価されることがあり、売り上げが落ちると、固定資産の価値も落ちること。
・そのためPBRも絶対的な指標でなく、利益が減ると数値が上がる可能性があること。
・特にメーカーなどの固定資産の比率が大きい企業は注意すること。

コラムニスト 横山 劉仁
提供:株式会社FP総研


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