株式市場は既に「バブル化」?
2009年10月29日半年で50%上昇してもピークから3割安の株式市場
今年3月以降、株式市場は目覚しい上昇を遂げました。世界のほとんどの市場で50%以上の上昇です。仮に私たちが「2007年の夏にはいったいいくらだったのか」をまったく知らなければ、ここ半年間の株式市場の上昇は「景気が物凄く良い証拠」のように思えることでしょう。
しかし、実際には私たちはここまで上昇してもまだ、2007年のピークから米国株は30%安の水準、日本株に至っては半分だということを知っています。あの頃と比べると景気はまだまだ弱いままであることを知っています。
問題はどの程度弱いのかです。今年の3月、株式市場が悲観のどん底にいた頃は、米国株も日本株もピークから約6割安い水準にいました。その頃と比べるとだいぶ回復したわけですが、実体経済の状態と比較すると、いったい3月の水準が本当はちょうどよいのか、それとも今の水準がよいのか、それが誰にも分からないのです。
デフレ下の株高
筆者を含めた「弱気派」の人々には、この半年間の株式市場の回復は急激過ぎる感じがします。各国でデフレが進行しており、失業率の上昇は止まらず、銀行が貸し出すお金の量も減り続け、一般の人々の住宅ローンの返済遅延とそれに伴う家の差し押さえもどんどん増えています。
この状況は日本で90年代に経験した状況にそっくりです。銀行部門も、家計部門も、財務状況が致命的に傷んでおり、とても「お金を使おう」とか「何かに投資しよう」という気にはなりません。企業部門の財務状況は比較的健全ですが、銀行が体力をすり減らしお金を貸し渋り始めているため、将来に備えて借金を返済してできるだけお金を手元においておこうとしています。
この結果、物価はどんどん下がっています。原油価格などの商品市況がまたぞろかなり上がってきているので世の中インフレになっているような感じがどうしてもしてしまいますが、それ以外の一般物価は世界的に確実にデフレ状況になってきています。なにしろ賃金・給料の上昇がまったく期待できません。これだけ失業が増えているのでそれも当たり前ですが、そんな状況で物価が上がるわけがありません。
既にバブル?
それでも株式市場は上がっています。「強気派」の間でよく言われるのは、「景気の最悪期は過ぎた」、「各国中央銀行の姿勢は超緩和的」、「企業のコストカット努力で収益も回復」、「インフレ懸念はまったくないので、金融緩和はかなり長く続く」と、「株式市場の好材料ばかり」だから株は上がる、というものです。いわゆる「スイート・スポット」の状態にあると彼らはよくいいます。
確かにそれもその通りかもしれません。しかしながら、これらは経済の一部の良い面しか見ていません。「景気の最悪期」は確かに過ぎたかもしれませんが、これは「景気循環」という永遠に続く(であろう)波に過ぎず、次の波はより深い谷間まで我々を飲み込むかもしれません。これがまさに日本の「失われた10年」で起きたことです。日本株は長期低迷の間も3度、50%程度の上昇局面を経験しました。しかしその次に来る下降局面はそれ以前よりもさらに厳しく、どんどん下値を切り下げていきました。
また、「中央銀行の姿勢が緩和的」なのも好材料とは限りません。中央銀行は景気が非常に脆弱だから緩和をしているわけで、それを好材料と捉えるのは本末転倒です。「企業のコストカット」も諸刃の剣です。コストカットは確かに企業の利益に対して少なくとも一時的には好影響を与えます。しかしながらやり過ぎれば労働者の収入が下がり、消費が減り、景気が悪化し、マイナスの影響として企業に降りかかってきます。現在のように雇用情勢も消費も非常に弱い状況であれば、その影響はかなり大きくなると考えられます。
これらに加えて、米国市場では「ドル安が企業収益にプラス」というのも「強気派」の根拠になっています。筆者のような弱気派には、この見方にも違和感がたっぷりあります。ドル安は、かなり単純化して言えば、「世界経済に使われるドルの量が増える」ことによって起きます。要するに世界の人々の財布の紐が緩んでいるということです。したがってそれ自体は景気に対して確かに悪いことではありません。
ただ、これが行き過ぎれば「バブル」です。世界の実際の景気はデフレ的で弱いにもかかわらず、財布の紐が緩んでそのお金が主に株式市場や不動産市場に向かっているとすれば、それをバブルといわずしてなんというかという感じです。
率直に言って筆者は、現在の状況はそうした状況に非常に近いと見ています。お金が消費や投資には向かわず、資産市場のみに向かうと状態が長く続くことはありません。
現在、こうした傾向はとくに長期的に発展が期待できる国で顕著です。具体的には中国、香港、シンガポール、ブラジルといったところで、これらの国は当局もバブルの発生を実質的に認め、徐々に手を打ち始めています。しかしながら、資金流入の規模と勢いを考えるとそうした小手先の政策でバブルを止められ可能性は低く、むしろこのまま行くとさらにバブルが膨らみそうな気が、弱気派の筆者にすら感じられます。
バブルはいつか必ず弾けます。ただ、それがいつになるのか、あるいは現在の市場が本当にバブル化しているのかそれすらも誰にも分かりません。ただ、実体経済と株式市場との乖離はかなり大きく広がってきている可能性があるということだけは意識しておいた方が良いと思います。
今年3月以降、株式市場は目覚しい上昇を遂げました。世界のほとんどの市場で50%以上の上昇です。仮に私たちが「2007年の夏にはいったいいくらだったのか」をまったく知らなければ、ここ半年間の株式市場の上昇は「景気が物凄く良い証拠」のように思えることでしょう。
しかし、実際には私たちはここまで上昇してもまだ、2007年のピークから米国株は30%安の水準、日本株に至っては半分だということを知っています。あの頃と比べると景気はまだまだ弱いままであることを知っています。
問題はどの程度弱いのかです。今年の3月、株式市場が悲観のどん底にいた頃は、米国株も日本株もピークから約6割安い水準にいました。その頃と比べるとだいぶ回復したわけですが、実体経済の状態と比較すると、いったい3月の水準が本当はちょうどよいのか、それとも今の水準がよいのか、それが誰にも分からないのです。
デフレ下の株高
筆者を含めた「弱気派」の人々には、この半年間の株式市場の回復は急激過ぎる感じがします。各国でデフレが進行しており、失業率の上昇は止まらず、銀行が貸し出すお金の量も減り続け、一般の人々の住宅ローンの返済遅延とそれに伴う家の差し押さえもどんどん増えています。
この状況は日本で90年代に経験した状況にそっくりです。銀行部門も、家計部門も、財務状況が致命的に傷んでおり、とても「お金を使おう」とか「何かに投資しよう」という気にはなりません。企業部門の財務状況は比較的健全ですが、銀行が体力をすり減らしお金を貸し渋り始めているため、将来に備えて借金を返済してできるだけお金を手元においておこうとしています。
この結果、物価はどんどん下がっています。原油価格などの商品市況がまたぞろかなり上がってきているので世の中インフレになっているような感じがどうしてもしてしまいますが、それ以外の一般物価は世界的に確実にデフレ状況になってきています。なにしろ賃金・給料の上昇がまったく期待できません。これだけ失業が増えているのでそれも当たり前ですが、そんな状況で物価が上がるわけがありません。
既にバブル?
それでも株式市場は上がっています。「強気派」の間でよく言われるのは、「景気の最悪期は過ぎた」、「各国中央銀行の姿勢は超緩和的」、「企業のコストカット努力で収益も回復」、「インフレ懸念はまったくないので、金融緩和はかなり長く続く」と、「株式市場の好材料ばかり」だから株は上がる、というものです。いわゆる「スイート・スポット」の状態にあると彼らはよくいいます。
確かにそれもその通りかもしれません。しかしながら、これらは経済の一部の良い面しか見ていません。「景気の最悪期」は確かに過ぎたかもしれませんが、これは「景気循環」という永遠に続く(であろう)波に過ぎず、次の波はより深い谷間まで我々を飲み込むかもしれません。これがまさに日本の「失われた10年」で起きたことです。日本株は長期低迷の間も3度、50%程度の上昇局面を経験しました。しかしその次に来る下降局面はそれ以前よりもさらに厳しく、どんどん下値を切り下げていきました。
また、「中央銀行の姿勢が緩和的」なのも好材料とは限りません。中央銀行は景気が非常に脆弱だから緩和をしているわけで、それを好材料と捉えるのは本末転倒です。「企業のコストカット」も諸刃の剣です。コストカットは確かに企業の利益に対して少なくとも一時的には好影響を与えます。しかしながらやり過ぎれば労働者の収入が下がり、消費が減り、景気が悪化し、マイナスの影響として企業に降りかかってきます。現在のように雇用情勢も消費も非常に弱い状況であれば、その影響はかなり大きくなると考えられます。
これらに加えて、米国市場では「ドル安が企業収益にプラス」というのも「強気派」の根拠になっています。筆者のような弱気派には、この見方にも違和感がたっぷりあります。ドル安は、かなり単純化して言えば、「世界経済に使われるドルの量が増える」ことによって起きます。要するに世界の人々の財布の紐が緩んでいるということです。したがってそれ自体は景気に対して確かに悪いことではありません。
ただ、これが行き過ぎれば「バブル」です。世界の実際の景気はデフレ的で弱いにもかかわらず、財布の紐が緩んでそのお金が主に株式市場や不動産市場に向かっているとすれば、それをバブルといわずしてなんというかという感じです。
率直に言って筆者は、現在の状況はそうした状況に非常に近いと見ています。お金が消費や投資には向かわず、資産市場のみに向かうと状態が長く続くことはありません。
現在、こうした傾向はとくに長期的に発展が期待できる国で顕著です。具体的には中国、香港、シンガポール、ブラジルといったところで、これらの国は当局もバブルの発生を実質的に認め、徐々に手を打ち始めています。しかしながら、資金流入の規模と勢いを考えるとそうした小手先の政策でバブルを止められ可能性は低く、むしろこのまま行くとさらにバブルが膨らみそうな気が、弱気派の筆者にすら感じられます。
バブルはいつか必ず弾けます。ただ、それがいつになるのか、あるいは現在の市場が本当にバブル化しているのかそれすらも誰にも分かりません。ただ、実体経済と株式市場との乖離はかなり大きく広がってきている可能性があるということだけは意識しておいた方が良いと思います。
グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿
提供:有限会社イマジネーション
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