
Business Media 誠
窪田順生の時事日想:
物事には必ずコインのように表と裏がある。それはビジネスも然り。詐欺や裏取引、あるいは法の網を巧妙にかいくぐったグレー商法……。もちろん、それらは断罪されてしかるべきだが、そんな「裏」から若きビジネスパーソンが学ぶことは多い。人々が何を欲し、社会には何が足りないのか。つまり、日本経済の「裏」を知ることができるからだ。
火曜日の時事日想は、テレビ、全国紙、週刊誌といういわゆるニュースの現場を経験してきただけではなく、実話誌などで裏ビジネスなどの取材を続けてきた筆者が、巷にあふれる事象を「裏」から読み解いていく。
世の中には口にするのも憚(はばか)られるというか、ちょこっとふれただけでも袋だたきにされるテーマがある。
最近では「南京事件」がこれにあたる。2月、名古屋市と友好都市である中国・南京市の使節団が表敬に訪れた際、河村たかし名古屋市長が「いわゆる南京事件はなかったのではないか」と口にして大騒ぎになったのでよくご存じだろう。
SKE48の出演イベントは延期し、中国の全人民代表会議は「南京大虐殺否定罪」を制定しようという話も出た。あらゆる方向へと飛び火をしたこともあり、マスコミはさっさと発言撤回をして謝っちまえみたいな論調が目立ったが、案の定というかやはりここにも「裏」がある。
市長のことは国家議員時代から連載コラムや著書を手伝っている縁でよく知っている。みなさんからすると、「みゃーみゃー」とうるさくて、いかにもポロッと「失言」してしまいそうなイメージかもしれないが、ああ見えて意外と思慮深い。理由もなく遠路はるばる訪れた客人にケンカを売るような非礼はしないはずだと思って、本人に直接事情を聞いてみた。
●南京市幹部が「ニコニコ」していた理由
「昨年から南京市とさらに友好を深めるため、南京事件についての討論会を開こうということで調整中だったんですよ。『30万人の虐殺はなかった』というワシの考えは信書で既に先方に渡している。そういう流れのなかの発言で、これから互いに意見交換をしようという第一歩だった。だから、あちらの使節団もぜんぜん怒っとりゃあせんでニコニコしとったよ」
その場に同席していた者や、市長の信書を南京の共産党幹部に渡した者にも裏をとると、確かに事実だった。マスコミが騒いでいるように「失言」が元凶であれば昨年、「南京事件はなかったのではないか」という信書を受け取った段階で南京市側は猛抗議していなくてはならない。
なぜそれをやらなかったのか。そこには南京の事情がある。実は南京は電子情報、石油化学、自動車、鉄鋼の4つを主要産業としており、多くの外資系企業が進出しているものの、日本企業がケタ違いに少ない。要するに、日本企業に来て欲しい南京としては、あまり些細なことで事を荒立てたくないというのがホンネなのだ。
画像:市長選挙出発式のようす、ほか(http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1203/27/news006.html)
事実、尖閣諸島沖で中国漁船衝突事件が起きて日中友好イベントが各地でキャンセルされるなか、南京だけは地元市民が現地の日本人留学生約100人を招き中秋節を祝う月見の宴を開いている。
河村たかしの発言に「ニコニコ」していたのは、南京のみなさんが人がいいからではなく、そのような目的があったからだ。
●取材申し込みに珍しく「かんべんしてちょうよ」
じゃあなんであんな大騒ぎに? と首をかしげる人も多いだろう。中国で長くビジネスをしている経営者は、その疑問にこう答える。

















